第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

災害・トリアージ

[RTD3] RTD(CN)3群 災害・トリアージ

Fri. Oct 4, 2019 3:10 PM - 4:10 PM RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:角 由美子(名古屋第二赤十字病院 医療安全推進室)

[RTD3-1] A病院救命救急センターが経験した硫化水素被ばく患者受入れの現状 -現状分析と課題解決に向けた取り組み-

宇野 翔吾 (株式会社日立製作所 日立総合病院 救命救急センター)

【背景】 
 テロ行為が頻繁化してきている現代では、放射性物質と爆発物の脅威を含めたCBRNEという名前で呼ばれるようになり、その脅威に対する整備が進めてられている。一度発生すると自然災害以上に大混乱を来し、病院スタッフにも二次災害を被る可能性が高い災害でもある。
【目的】 
 A病院救命救急センター(以下、救命センター)に来院した、硫化水素被ばく患者受入れ時に生じた問題を明らかにし、課題を解決していくための取り組みについて報告する。
【方法】 
 1)CBRNE災害症例の選定後、救命センターを取り巻く問題に対し、SWOT分析を用いて分析する。
 2)上記結果から、救急看護認定看護師として取り組んだことを抽出する。
 3)上記で得た知見から、課題を明確にする。
【倫理的配慮】 
 個人が特定されないよう、個人情報保護に配慮した。
【症例】 
 201X年某日、市内作業現場(マンホール内)で、CPA疑いのドクターカー要請。ドクターカー出動途上で「硫化水素発生中」の一報あり。傷病者人数も不明であり、災害現場では「NBC災害」として対応。傷病者救出後、HOTLINE入電。入電内容「50歳代男性、マンホール内で卒倒。意識レベルⅢ-300、下顎呼吸あり」との報告により、ドクターカーにて搬送。
 来院時、強い刺激臭があり硫化水素汚染に対し、「病院前除染未実施」であることが判明。すぐに除染後トリアージから除染前トリアージ対応に切り替え、汚染除去室での水除染後、初療室へ収容した。一部の救命センタースタッフに体調不良者が出ていたが、いずれも軽症であった。
【結果】
 今回、救命センターに生じた問題をHOTLINE情報や看護記録等を用いて整理し、解決していくためにSWOT分析を用いた。「救命センターにおけるCBRNE災害・テロ対策の構築について」という目的で実施し、内部環境には救命センター内を、外部環境には救命センター外を設定した。強みの部分では、地域の中核病院であり、災害拠点病院としての立ち位置がある。さらに、月に1度問題症例に対するM&Mカンファレンスが開催されている。機会の部分では、近隣消防と密接な連携をとることでCBRNEに関する情報共有が得られている。この強みを利用してマイナス面への介入方法を検討した。マイナス面での弱みの部分では、CBRNE災害に対応するためのマニュアルも存在しないだけでなく、装備や施設も不十分であった。これに対し、前年度11月にNBC災害・テロ対策研修を受講した際の知識や経験をもとに、マニュアルの作成を開始した。さらに、救命センターとして最低限備えておくべき装備や設備についても院内関係部署と協議を開始し、最善の方法を検討している。脅威の部分では、救命センター周辺には工場が多く、CBRNE災害の脅威が顕在化していることである。“稀な災害”というイメージにより軽視されがちであったために、今回のような二次災害を出してしまっている。この問題に対応するため、自然災害以上に備えておくべきものとして教育活動を開始した。
【考察】
 今回の症例では、災害医療現場において、医療ニーズを迅速に判断し、安全且つ的確な救急看護実践により、今回救命センターで生じた問題を解決していくことが重要であると考えた。CBRNE災害に対応するべき知識が乏しい場合、緊急時に迅速な対応や判断が劣る原因となり、二次災害を被る可能性も考えられる。人為的なミスにより引き起こされる労働災害という名の特殊な災害の猛威に対し、どのような方法で安全に立ち向かっていくべきか、地域のリソースや連携の下で検討していく必要がある。