第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

その他

[RTD4] RTD4群 その他①

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:寺師 榮(東洋医療専門学校 救急救命士学科)

[RTD4-3] 救急外来を受診するがん患者の特性と症状の分析

宮城 綾香, 大嶋 守 (砂川市立病院)

<目的>A病院を含む二次医療圏では、かかりつけ医・在宅医療を担う体制が十分に整備されていない。このため、がん患者は状態悪化時にA病院救急外来を受診する。がん治療が在宅へとシフトしている昨今、外来におけるがん看護の役割が重要となる。しかし救急外来におけるがん患者の対応や特有なケアが適切に行われているのかは検証されていない。そこで、A病院救急外来で求められるがん看護を明らかにするために、救急外来を受診するがん患者の特性を明らかにすることを目的とした。
<方法>後ろ向き観察研究。2017年1月~3月に地域救命救急センター・地域がん診療拠点病院であるA病院の救急外来を受診した全2,675件のうち、がんの診断名がある360件の診療記録を対象とした。すべての診療記録をがん化学療法看護認定看護師、救急外来看護師、長年がん看護に従事している看護師の3名で精査した。がん特有の症状と、治療・緩和ケアに伴う有害事象かどうか合意の上判断し、がん関連症状とがん関連症状以外に分類した。季節性の感染症や外傷などはがん関連症状以外に分類した。記述統計によるデータの類型化とχ二乗検定による群間比較を行った。統計解析はJMP®12.0を用いた。A病院看護部倫理審査委員会の承認を受けて行った。
<結果>対象は、平均年齢74.5歳(範囲26~100歳)、男性51%、女性49%だった。360件のうち、がん関連症状としての疼痛、呼吸苦、発熱などの受診は96件(26.7%)、がん関連症状以外での受診は264件(73.3%)だった。受診の転帰は、がん関連症状では、入院47件(49.5%)、帰宅48件(50.5%)、がん関連症状以外では入院81件(30.8%)、帰宅182件(69.2%)だった。がん関連症状の入院割合はがん関連症状以外の入院割合と比べて有意に高かった(=0.0011)。トリアージ区分を低緊急、準緊急・緊急で分類したところ、がん関連症状の低緊急は46件(61.3%)、準緊急・緊急は29件(38.7%)だった。がん関連症状で低緊急だったにも関わらず入院に至った患者は18件(41.9%)で、症状の内訳は疼痛が5件(27.8%)だった。がん関連症状で準緊急・緊急で入院に至った患者は25件(58.1%)で、症状の内訳は疼痛が8件(32.0%)だった。
<考察>がん関連症状の転帰では約半数が入院に至っており、症状は疼痛が一番多かった。がん関連症状で準緊急・緊急トリアージで入院した症状は疼痛が一番多かった。また、トリアージ区分が低緊急であるにもかかわらず4割弱が入院に至っており、その症状でも疼痛が一番多かった。以上の結果より、がん関連症状で救急外来を受診し入院に至る症状は、疼痛が重要だといえる。がんによる疼痛は、入院中に疼痛管理の方針を固め外来でフォローされるが、増強時の対応などセルフケア能力が十分に発揮できていないと考えられる。したがって救急外来は、痛みの程度や薬剤の使用状況、日常生活への影響など情報収集を行い、病棟や外来と連携して得た情報をフィードバックできる仕組みが必要であると考える。また、今後がん治療はさらに進歩し複雑な症状の対応が求められてくるため、救急外来においてもがんに対する知識と技術を高めていくことが重要であると考える。