第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

その他

[RTD4] RTD4群 その他①

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:寺師 榮(東洋医療専門学校 救急救命士学科)

[RTD4-4] A大学病院高度救命救急センターの災害時の看護活動の現状と連携の課題 救急外来と救急ICUの合同災害訓練を通じて

鶴田 聖季, 伊礼 リカルド, 大和田 幸男, 川谷 陽子 (愛知医科大学病院)

【はじめに】A大学病院は、基幹災害拠点病院であり、24時間緊急対応をし、傷病者受け入れや搬出を行う役割が求められている。災害発生時に迅速に対応ができるよう大規模災害マニュアルに沿った多数傷病者受け入れ対応およびBCPシナリオに沿った総合防災訓練の実施、災害の講義、各部署における災害マニュアルの整備が行われている。今回、救急外来と救急ICU合同災害訓練を行い災害時の看護活動の現状と連携の課題が明らかとなったため報告する。
【目的】基幹災害拠点病院の高度救命救急センターとして救急外来と救急ICUとの連携体制を構築するための現状把握と課題を明らかにする。
【方法】
1)合同災害訓練実施
2)合同災害訓練後、災害発生直後の対応(安全確認、報告、報告書の記載、患者のふりわけ、人員配置)、協働(情報共有、協力依頼、役割分担)の項目について独自に作成した評価表を使用し、合同災害訓練参加者で意見交換を行い救急外来と救急ICUの看護活動を5段階(5:とてもよくできた、4:よくできた、3:かろうじてできた、2:あまりできなかった、1:まったくできなかった)で評価した。
3)合同災害訓練後の振り返りから評価の根拠と連携に関する課題を抽出した。
【倫理的配慮】当院の看護部倫理審査会で承諾を得た。(承認番号:2019-3)参加者には個別に研究目的と匿名性の保持、プライバシーの保護について口頭で説明し許可を得た。
【結果】救急外来の評価は災害発生直後の対応(安全確認4、報告5、報告書の記載5、患者のふりわけ5、人員配置5)、協働(情報共有5、協力依頼3、役割分担3)であった。協力依頼と役割分担で評価が低かった根拠には、救急外来での業務経験のないスタッフに短時間で業務内容を説明するのが難しい、患者受け持ちをしながら赤エリアのリーダ役割を担うのが難しいという点があげられた。救急ICUの評価は災害発生直後の対応(安全確認4、報告5、報告書の記載5、患者のふりわけ3、人員配置3)、協働(情報共有5、協力依頼3、役割分担2)であった。患者のふりわけと人員配置で評価が低かった根拠には、実際に重症度の高い患者を移動する訓練を行っておらず移動先の対応の動きもわからないという点があげられた。協力依頼と役割分担では、救急外来での役割を理解することが難しくまた情報共有するべき内容がわからない、トリアージに不安がある、トリアージタグの記載ができなかったという点があげられた。
【考察】患者のふりわけと人員配置で救急外来と救急ICUの評価が異なった要因は、それぞれの部署の診療体制の特徴が反映されたと考える。救急外来では通常業務として来院する患者の緊急度・重症度で診療の環境を調整し人員配置も流動的に行っているため評価が高かった。協力依頼と役割分担が両部署とも評価が低かった要因は、協力依頼では、初期診療、災害についての知識が少なく、また災害時の看護活動を学習する機会が少ない救急ICUスタッフと情報を共有する難しさがあったことが考えられる。役割分担では、複数の重症患者を受け持つ経験が少ないこと、トリアージの経験がないことが考えられる。さらに救急ICUでは、初期診療における患者の状態評価や処置内容についての理解、START法・PAT法の評価項目から想定される患者像の認識の違いが要因として考えられた。合同災害訓練の実施と振り返りから災害時の看護活動の現状が明らかとなった。根拠から抽出された救急外来と救急ICUの災害時連携の課題は、初期診療体制の理解と経験の強化、災害に関する知識の習得、災害時における役割機能の共有であった。