第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

RRS

[RTD6] RTD(CN)6群 RRS

Fri. Oct 4, 2019 2:10 PM - 3:30 PM RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:丹羽 由美子(愛知医科大学病院)

[RTD6-3] A病院における院内救急コールの現状とRapid Response Systemに関する取組み

小笠原 美奈 (秋田赤十字病院)

Ⅰ.はじめに
 A病院では高度意識障害の発生、呼吸停止や死戦期呼吸、心停止の際発動される院内救急コール(以下スタットコール)がある。私は2016年看護部長から、看護師の急変対応能力向上を図ってほしいというコンサルテーション依頼を受けた。そこで現状を把握するためスタットコール事後検証を行った。その内容からA病院でもRapid Response System(以下RRS)構築が急務と考えそれに携わった。今回、スタットコール事後検証で明確となった課題を報告し、RRS構築に向けて取り組んだ内容を報告する。
Ⅱ.事後検証の方法
1.スタットコール発生部署で、管理者を含めた看護師と共にカンファレンスする。
2.良かった点や改める点をフィードバックする。
3.カンファレンス内容と電子カルテの情報をまとめる。
Ⅲ.倫理的配慮
 患者に関する情報は「診療情報閲覧の許可」を提出した上で個人を特定されないように処理し、目的以外には使用せず、その情報収集のために使用する電子カルテは特定した場所で閲覧した。看護師には個人を特定したり評価するものではないことを口頭で説明し同意を得た。
Ⅳ.事後検証の結果
 スタットコール発生件数は2016年度7件、2017年度9件、2018年度8件だった。事後検証ができたのは15件だった。15件中スタットコール発生前に現在のRRS発動基準に合致する症状が発生していた件数は12件だった。最も多かったのは「何らかの懸念」で内容は不穏行動や周囲に無関心だった。「呼吸数の変化」を認識しているのは2件であり他の13件は呼吸数測定がされていなかった。「酸素飽和度の低下」を認識していたのは7件であり6件は酸素飽和度測定がされていなかった。「収縮期血圧の低下」を認識しているのは1件だった。
Ⅴ.事後検証からみえる課題
 スタットコール発生前にRRS発動基準に合致する症状が発生していた件数が12件から、A病院でも異常所見を早期に認識し適切な対応により心停止を防ぎ得る可能性があると分かった。しかし呼吸数など、バイタルサイン測定が徹底されていないことが明確になった。人による判断の違いが生じることを回避するためには、異常であるというバイタルサインの基準作りが重要になってくる(安宅,2016)と述べている。患者のベッドサイドで最も診ている看護師が判断する際、曖昧さをなくすため明確な発動基準を作り観察の意義を周知する必要がある。 
Ⅵ.RRS構築に向けての取組みと今後の課題
 事後検証を始めた当初から、救命救急センター長と医療安全推進室と討議し、RRS発動基準を作り2018年4月からRRSが始まった。私は看護師に対し、RRSの概念や観察の意義について毎年講義している。しかし患者の急変兆候に気付くための状況認識力を磨くためには座学だけでは限界があり、シミュレーションが出来る体制作りが必要だった。そこでコアメンバーとして各部署から看護師を募り、コアメンバーは職員に対するシミュレーションでインストラクションすること、RRS発生時やスタットコール発生時のリンクナースの役割を担うことを伝え、コアメンバーに対する学習会を始めた。現在はコアメンバーが主体となり、月2回のRRSシミュレーションが開催され、看護職員の35%が受講を済んでいる。
 RRS構築後の発動件数は2件であり、予期しない心停止は明確に減少したとはいえず、事後検証で看護師の対応能能力向上もできたといえない。今年度医療安全推進室と協力し、院内RRS運営部会を視野に入れた看護部RRSチーム会を発足した。教育や啓発活動と急変対応能力向上を目指した活動を継続する。