第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

看護教育

[RTD7] RTD7群 看護教育

2019年10月4日(金) 15:50 〜 17:00 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:樅山 定美(医療創生大学)

[RTD7-5] 2年課程の看護学生がB県医師会認定BLSインストラクターとして、一般市民を対象に講習を実施した成果と課題

高野 直美1,2, 小野澤 清美2, 金子 健彦3 (1.日本医療科学大学 保健医療学部 看護学科, 2.大宮医師会看護専門学校, 3.和洋女子大学大学院 総合生活研究科)

【目的】現代の看護基礎教育において,救急救命活動の実践的な技術習得は極めて重要性を増している。2年課程のA看護専門学校では,学生全員が准看護師免許を有している。従来,A看護専門学校では,消防機関による普通救命処置の指導を受けてきた。2012年からは.学生がより確かな実践力を習得できることを目的に,B県医師会認定BLSインストラクターとして非医療従事者である一般市民と下級生を対象にBLSの指導を行う演習を導入した。そして,最終的に学生全員がB県医師会認定BLSインストラクターとして認められた。そこで,この取り組みの成果と課題を明らかにすることとした。
【方法】2015年8月及び2016年8月に行われた授業科目「災害看護Ⅱ(1単位30時間) 」とした。学生は,AHA BLS ヘルスケアプロバイダーを取得し,インストラクション技法を学習した後に,非医療従事者である一般市民と下級生を対象にBLSの指導を行った。対象は,B県内の2年課程(修業年限3年)のA看護専門学校3年生76名と学生からBLSを受講した一般市民32名にアンケートによる自記式質問紙調査を行った。【倫理的配慮】学生および一般市民全員に自記式質問紙は無記名であり,授業前に目的,方法,プライバシーの保護,成績等の評価には全く関係がないこと,自由意思による参加でありいつでも取りやめることができること,断ってもなんら不利益のないことを文章および口頭で説明をした。また全ての回答は,全員が個別の封筒に入れ,誰が投函したか見えない場所に回収BOXを設置した。なお,本研究はA看護専門学校施設長の承認を得て行った。
【結果】同意が得られた学生53名(回収率69.7%)と一般市民32名(回収率100%)であった。質問紙では,学生からは,「少し不安が軽減できた」7名(13.2%),「救急看護に興味が持てた」7名(13.2%),「教えることで知識と技術が身についた」5名(9.4%),という有益であった一方,「自信がなく不安」8名(15.1%),「自分には救急看護が向かないと思っていたが,やはり向いていない」4名(7.5%)「怖い、恐ろしい」2名(3.8%)などの記載があった。一般市民からは,学生の教え方は「わかりやすかった」32名(100%),「機会があれば再度受講したい」が29名(90.6%)であった。
【考察】A看護専門学校の学生は,全員准看護師資格を有している。また学生の90%は,准看護師として働きながら学習しており,患者急変時や災害時の心肺機能停止場面に遭遇した時は,准看護師として適切なBLSを行動に移さなければならない。この取り組みによって,実際にインストラクターとして一般市民に教えたことにより,根拠ある正しい知識・技術をより確実に習得できたと考える。福島ら(2014)は,BLS講習会のインストラクターの一般生自己効力感尺度の測定研究を報告し、BLSインストラクターとしての活動を通じ,一般性自己効力感が高められる可能性を示唆している。A看護専門学校においても,実際に一般市民と下級生を対象にしてBLS指導ができた喜びに加え,受講した一般市民からの前向きな評価が学生の自信や自己効力感を高めることにつながったと考えられた。しかし,知識と技術が習得できても必ずしも自信や自己効力感が高まるわけではないことが示唆された。演習前後でどのように学生の心理面に影響を及ぼしているかは未検証である。今後さらによい教育内容にするためには,不安感をどの様に取り除いていくかもひとつの検討課題であることが考えられた。