第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

看護教育

[RTD7] RTD7群 看護教育

2019年10月4日(金) 15:50 〜 17:00 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:樅山 定美(医療創生大学)

[RTD7-6] 救急看護師が「モデル」と捉える同僚の社会人基礎力 -調査対象者の救急看護経験年数の観点から-

源本 尚美1, 城丸 瑞恵2, 澄川 真珠子2 (1.市立札幌病院 救急外来・内視鏡画像センター, 2.札幌医科大学保健医療学部)

【目的】
 救急看護師が看護実践においてどのような社会人基礎力を有する同僚を「モデル」と捉えているのかを救急看護経験年数の観点から明らかにする。
【方法】
 全国の救命救急センターから無作為抽出した25施設に勤務している看護管理者を除く580名の救急看護師に質問紙調査を実施した。調査期間は2017年12月5日~2018年3月31日であった。調査内容は、救急看護師及び救急看護師が「モデル」と捉える同僚の属性、社会人基礎力などの項目で構成した。社会人基礎力は【アクション】9項目、【シンキング】9項目、【チームワーク】18項目で構成されている。経済産業省の提示するプログレスシートは3段階評定であるが、本研究においてはプレテストの結果を考慮して5段階評定とし、尺度得点を項目数で除した尺度平均得点(得点範囲1~5点)を算出した。分析は救急看護経験年数1-2年目、3-5年目、6年目以上の3群に分類し、「モデル」の社会人基礎力についてKruskul-Wallis検定を実施した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮】
 札幌医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
 質問紙は397名から回収し(回収率68%)、392名の有効回答(有効回答率98%)を得た。対象者(以下、救急看護師)は男性69名(17.6%)、女性321名(81.9%)、無回答2名(0.5%)、年齢34.5±8.5歳、救急看護経験6.9±5.5年であった。救急看護師が自己評価した社会人基礎力得点は3.47であり、救急看護経験年数別では6年目以上の得点が最も高かった。一方、救急看護師が捉えた「モデル」の社会人基礎力得点は4.53であった。救急看護経験年数別【チームワーク】は1-2年目4.72、3-5年目4.66、6年目以上4.50であり、1-2年目は6年目以上と比較して有意に得点が高かった(p=.024)。また、その下位概念である<柔軟性>は1-2年目5.00、3-5年目5.00、6年目以上4.33であり、1-2年目と3-5年目は6年目以上と比較して有意に得点が高かった(p=.008,p=.027)。救急看護経験6年目以上の看護師が捉えた「モデル」の社会人基礎力得点は、他群より低い傾向にあった。
【考察】
 救急看護経験1-2年目の看護師はチームワークや職場の人間関係を重視し、自身の意見や思いを汲み取って欲しいとの願いから【チームワーク】<柔軟性>が高いと捉える同僚を「モデル」にしていることが推察された。救急看護経験3-5年目の看護師は、プリセプターやリーダー役割を担う時期である。この時期は、支援を受ける側から支援する側に立場が変わり自らが他者に働きかけることが求められる。また、主体的に多職種と連携する機会が多くなることから、様々な立場・役割の人々と協働するうえで<柔軟性>に関連した課題を抱えており、自身に<柔軟性>を培う必要性を認識しているため、そのような力があると捉える同僚を「モデル」にしていることが推察された。救急看護経験6年目以上の看護師は、自己評価した社会人基礎力得点が他群より高かったことから、キャリアを積む中で社会人基礎力がすでに培われているため、「モデル」に求めていないことが推察された。
【結論】
 救急看護経験年数別に「モデル」の社会人基礎力を分析したところ、1-2年目は【チームワーク】<柔軟性>、3-5年目は<柔軟性>が高いと捉える同僚を「モデル」としていた。6年目以上の救急看護師が捉えた「モデル」の社会人基礎力は、他群より低い傾向にあった。以上より、救急看護経験年数に合わせた支援の必要性が示唆された。