第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

チーム医療

[RTD8] RTD(CN)8群 チーム医療

2019年10月5日(土) 09:00 〜 10:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:徳山 博美(関西医科大学附属病院)

[RTD8-5] 救命救急センターにおける多職種連携

吉田 裕子 (横浜市立市民病院救命HCU)

【はじめに】
 当院救命救急センターは1次から3次までの救急患者を受け入れている。救命救急センターに来院する患者の中には小児患者も多く、その中には子どもへのマルトリートメントが疑われる症例がある。子どもの安全を守るために救急看護認定看護師が医療ソーシャルワーカー(以下MSW)や医師との連携により、マルトリートメントが見逃されない様に取り組んだので報告する。
【実践】
 小児科や産婦人科などの専門科外来と異なり、知識や経験の不足などから救命救急センターでは子どものマルトリートメントを見逃してしまうリスクがある。どんな状況がマルトリートメントなのか、知識にばらつきがあり、タイムリーにMSWに繋げないケースもあった。そこで、MSWや医師への情報提供の方法や情報提供後の流れについて学習会を行い、スタッフの教育を行った。また、当院では視点の標準化を図るための「子ども受診時チェックリスト」を導入している。スタッフが患者に異変を感じた場合はチェックリストを記載し、MSWへ連絡をしている。MSWはスタッフからの情報をもとに必要に応じて児童相談所や区・福祉への通告を行っている。虐待が強く疑われる場合は、院内ルールに沿って対応チームメンバーを臨時で招集し、子どもを保護するべきか、通告するべきかを即時に話し合うシステムも確立している。スタッフには「こんなことで虐待やマルトリートメントを疑っていいのか」と躊躇するのではなく、まずチェックリストでの客観的な判定の実施とカルテへ情報を記載することが重要となることを学習会で強調した。結果として、スタッフがマルトリートメントの視点を持って患者と関わることができ、MSWへの報告症例の中にはすでに児童相談所に通告があった事例や地域・学校から相談があった事例があり、子どもの安全を守るための一助になっていると考える。
 現在、院内の子ども虐待対応院内組織(Child Protection Team)に救急看護認定看護師として参加することで、MSWや医師と情報を共有し、院内で発生した事例を認識することができている。その中で個人情報の観点に留意しながら、活用できる情報や知識をスタッフに提供し、感受性が高められるように支援している。またMSWと協力し、チェックリストで必要な情報が得られるよう、より精度の高いチェックリストへの改訂に取り組んでいる。
【おわりに】
 現在、虐待における事件が社会で増加している。チェックリストを介してのみではなく、救命救急センターで危機に直面している患者に適切に対応し、MSWや医師とネットワークの強化ができるようなスタッフ教育や環境づくりを救急看護認定看護師として実践することがマルトリートメントを見逃さないために必要である。また、救命救急センター受診時に患者の異変を感じた場合は、MSWや医師とカンファレンスを通した事例検討を行うことで各専門職の視点から患者を多角的に捉えることができ、子どもの安全を守る取り組みとなると考える。