第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

チーム医療

[RTD8] RTD(CN)8群 チーム医療

2019年10月5日(土) 09:00 〜 10:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:徳山 博美(関西医科大学附属病院)

[RTD8-6] 病院救急車導入における看護師の役割

中澤 亜紀 (東京都保健医療公社多摩南部地域病院救急外来)

【はじめに】
A病院は、二次救急病院・災害拠点病院として、東京都内に6病院とがん検診センターを有する組織の一病院である。A病院に救急科医師はいないため、複数科で救急外来の運営は行われている。今回、新たに地域医療連携強化として、病院救急車の導入に至った。導入において、救急看護認定看護師としての視点でどのような役割が必要であったか、他部門との調整経緯と、準備したことを振り返り、実践報告を行う。
【実践】
A病院は、地域の医療機関からの搬送要請に対応するため、病院救急車の実動に向けた取り組みを開始した。乗車要員は、消防庁OB運転士・助手、看護師の3名であり、原則医療処置を必要としない症例としている。A病院の特性から、救急車で受け入れる疾患の緊急度は限られており、救急領域における緊急性の高い症例の対応には、不慣れな現状がある。現状での病院救急車運用において、患者の安全な搬送を行うためには、搬送依頼を発信・受信者両者の明確なコンセンサスの確立が必要であると感じた。さらに、乗車看護師が、現地到着時に確実にショックの予測・判断ができること、急変時に質の高いBLSが実践できることが必要であると考えた。そのために、まず、具体的な搬送基準を設けることと、現地到着・患者接触時に救急車要請を加えることが必要ではないかと提案を行った。搬送基準は、ショックに至る前兆候をABCD項目に分け、項目ごとに数値や症状を具体化した基準を作成した。作成した基準は、地域連携を行う支援センター部門と共有・検討し、病院救急車運営会議に提出を行った。地域の医療機関との更なる連携強化、地域を医療で支えるため搬送可能な患者層を増やしていく目標との兼ね合いから、運用基準は一部採用され、主に看護師が現地到着時の判断基準として使用することとなった。乗車看護師となる外来もしくは支援センター看護師に対しては、ショックの早期認識とBLS実技を含む対応学習が必要であると考え、学習会を実施した。パート看護師の教育時間の確保は時間的に困難であることから、まずは資料配布から始めている。
【おわりに】
今回、救急認定看護師として病院救急車始動のための他部門間調整にあたり、患者の安全な搬送がなされるために、病院救急車乗車看護師の育成と、病院救急車搬送基準を作成、提案する役割を担った。この過程で救急医療領域におけるセオリーを他部門に理解してもらうためには、発案の根拠まで説明をすることの必要性を感じた。また、交渉においては、直接対話を行うことで理解がスムーズに得られることを認識した。今後も共通の組織目標下、組織横断的に患者の安全を守りながら救急活動を広げる機会の際は、学びを生かした活動を行う。