第21回日本救急看護学会学術集会

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特別RTD

[SRTD] 【日本病院会病院総合力推進委員会共催】患者にとって最善な医療の選択とは何かーパターナリズムとインフォームドコンセントを問い直すー

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 10:50 AM 第2会場 (2F コンベンションホールB)

座長:有賀 徹(独立行政法人 労働者健康安全機構), 木澤 晃代(日本大学病院 看護部)

[SRTD4] 患者とその家族は、自分たちで本当に意思決定したいと思っているのか

中村 美鈴 (東京慈恵会医科大学 医学部 看護学科)

救急医療の現場では、救急医は蘇生の限界について経験的に判断する能力を備えており、今まではその判断を家族に示し、蘇生の可否を決定する慣習も存在した。それは、日本文化には、医師の裁量に任せるパターナリズムが存在していたためである。またそのことに対して、以前はあまり問題は生じていなかった。しかし、時代背景に伴い、患者・家族の自己決定の権利が主張されるようになり、患者とその家族の意思決定や代理意思決定を余儀なく「迫る」風潮に移り変わってきた経緯がある。
実際に著者が取り組んだ先行研究(中村,村上他,2013)においては、「生命の危機状況にある患者・家族の延命治療に対する医師と家族の話し合いのプロセス」の結果は、以下の通りであった。
1.回復の見込みがないと判断したときは、意思決定の時期を察してもらえるよう早い段階で話をする
2.回復の見込みがない状況をありのままに説明する
3.次に延命治療について具体的な話をする
4.決定する治療は医師が想定し、家族が自ら選択できるよう話を勧める
5.最終決断は、状況の理解を促し、家族との話し合いで決定している
6.延命治療の意思決定 という内容で、時間軸にそって行われていました。特徴的だったのは、家族が「治療の意思決定後は基本的にそれ以上の話し合いはしない」という結果であった。この医師と家族におけるインフォームドコンセントの場面には、看護師は同席していない。同席することが重要と認識しても、同席できない実状があった。
 また、別の先行研究において見出された「生命の危機状況にある患者の家族の体験(清水,中村他,2018)」は、衝撃と困惑の直中で一人の家族に決断がゆだねられ、その家族は医師の説明だけでなく医療者の動きや表情から患者の病状と経過を推しはかりつつ、器械に生かされている家族を前に生きている意味 を問い直し難渋する反面、奇跡的回復を信じて生命徴候を探り続けるており、このような葛藤のなかで意思決定に至っていた。意思決定後は患者の死について同じ悲しみを抱えた家族とは気遣いから向き合えず、話せない状況で、自らの決断を他者に非難されないか気にかけながら、命にかかわる決断の是非に確信が持てず自問自答を繰り返しており、その過程で家族や人々に支えられ癒され、患者の死の時期を肯定的に意味づけ決断は適切だったと確信を深めていくと推察された。しかしながら、その家族たちは、患者の推定意思を推し量りつつ、代理意思決定を行っているが多くの家族は、重責を感じたり、PTSDを生じたり、鬱になったりしていた。
 以上より、患者・家族と医療者が協働で方針を決めるShared Decision Makingのスタイルを基本形とし、様々な状況と様々な患者・家族に合わせて、患者・家族が本当に意思決定したいと思っているのか、あるいは、どの程度意思決定に参加したいか査定する。次に、患者・患者の状況,家族の意思決定参加の程度の希望によって、コミュニケーションを工夫し,立ち位置を適宜、評価しながら、意思決定の共有の程度を吟味し、応用するという考え方はどうだろうか。その結果、パターナリズムもしくは医療者主導で、意思決定に重みを置くのが最善なのか、患者・家族の自己決定が最善なのかを問うことができると考える。
 今回の特別RDTでは、フロアーの皆様と、患者・家族にとって最善な医療の選択とは何かについて考究したい。