第21回日本救急看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY3] 救急看護師がACPに関わる意義

Fri. Oct 4, 2019 3:30 PM - 5:20 PM 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:山勢 善江(前 日本赤十字九州国際看護大学), 立野 淳子(小倉記念病院)

[SY3-3] 救急看護師が織りなすACPとは -CNSの立場から-

岡林 志穂 (高知県・高知市病院企業団立高知医療センター救命救急センター)

救急領域における終末期は、患者・家族にとって突然訪れ、患者は、病状や薬剤などの影響により意思表示できる状態にはなく、家族に意思決定を委ねざるおえない状況であることが多い。そして、家族はその重責を背負わざるおえない。このような状況下において、救急看護師は、時間的制約の中で代理意思決定を担う家族への対応にさまざまな困難さを抱きながら関わっている。

 近年、質の高いエンド・オブ・ライフケアのために、指示書の作成を重視しているアドバンス・ディレクディブ(AD)から話し合いのプロセスを重視しているアドバンス・ケア・プランニング(ACP)へと意思決定の枠組みが変化している。両者とも、意思表示が難しい状態になっても患者の意向を尊重した医療を行うことを目的としているが、前者は、患者が自分に起こりえることを予測すること自体が難しく、起こった際は、事の複雑さからADを適応させることが困難である、代理意思決定者がAD作成に関与していないことなどのデメリットがあると考えられている。

 ACPとは、将来の意思決定能力の低下に備えて、今後の治療・療養について患者・家族とあらかじめ話し合うプロセス1)である。主に患者の現在の気がかりや不安、患者の価値観や目標、現在の病状や今後の見通し、治療や療養に関する選択肢について話し合われる1)。効用は、患者の自己コントロール感が高まる、代理意思決定者-医師のコミュニケーションが改善する、より患者の意向が尊重されたケアが実践され、患者と家族の満足度が向上し、遺族の不安や抑うつが減少するなどがある2)といわれている。また、ACPのタイミングは、早すぎても遅すぎて適切でない。救急領域でACPが実施される場合は、患者の置かれている状況に時間的猶予がないため、主に代理意思決定者と短時間で行われ、話し合いがされたとしても、行われる医療行為をするかしないかに限られ、その背景にある価値観や目的が探索されない2)ことが多く、遅すぎるACPとなることが多い。よって、救急領域でACPを実施することは困難なことである。それは、NOである。

 救急領域は、他領域と比べて制約の多い領域である。救急看護師は、様々な制約の多い中でそれらを打破しながら患者・家族に最善な看護を提供できるプロフェッショナルである。今回、Jターンでドクターヘリ搬送されたCPA患者家族、増悪を繰り返すCOPD患者、リビングウィルを作成していた神経難病患者・家族、CPA蘇生後の患者・家族、担癌患者などの事例を提示させていただき、救急看護師が患者・家族と織りなすACPを可視化することで、救急看護師がACPに関わる意義について考えたい。



<参考・引用文献>

1)長江弘子(編).(2014).看護実践にいかすエンド・オブ・ライフケア.日本看護協会出版会.38-49.

2)平成29年度厚生労働省委託事業 人生の最終段階における医療体制整備事業 患者の意向を尊重した意思決定のための研修会   
  E‐FIELD研修資料.