第21回日本救急看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY4] ALL JAPAN!2020年東京オリンピック・パラリンピックコンソーシアムによる医療活動計画と危機管理

Sat. Oct 5, 2019 10:10 AM - 12:00 PM 第1会場 (2F コンベンションホールA)

座長:森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科救急科学), 佐藤 憲明(日本医科大学付属病院)

[SY4-3] 重症患者の受け入れ、集中治療体制の構築 今、ICUに求められているもの

後藤 順一 (河北総合病院)

2020 年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは、参加選手約1万2,000人、観客50万~90万人/日、これにスタッフとボランティアなどを合わせると、延べ1,000万人規模が予想されている。このような状況下で多数傷病者が発生した場合、近隣の医療機関へは多くの患者が搬送されることが予測される。 このことから、ICUはどのような対応が迫られるのであろうか?
何らかの大事故災害発生時には、DMAT が主体となり現場での救出、救助、救命医療がなされる。そして救助された重症傷病者は、トリアージを経て医療施設に搬送される。また、邦人・洋人を問わず被災者は災害拠点病院を理解しているわけでは無い。そのため、災害が発生した近隣の病院や診療所、クリニックなどの医療施設に自ら受診する可能性も高い。そのため、災害現場から直接、あるいはICU環境が無い災害発生近隣施設や広域医療搬送により、病態悪化や診療困難として重症患者が、ICU管理が可能な施設へ集中して転院搬送されてくる。また、大事故災害の慢性期や状況安定化により手術が可能になれば、手術患者の周術期管理も従来通りICUで管理され、大事故災害時のICUの役割はさらに大きくなると考える。大事故災害時ICUでは、傷病者の発生状況に応じて、入退室基準は災害用に変更する必要があり、日常の医療とは違う対応が必要になる。つまり、通常のICUでの医療は人員、医薬品、資器材を個別の患者に最大限使い、一人一人にベストな医療を提供できるために行われるのに対して、災害時のICUでの医療は、限られた資源で最大多数の患者の救命、良好な予後を追求することに志願が置かれる。災害発生による重症患者の増加に伴い、限られるICUスペースの調整が迫られる。これに対して2018年日本集中治療医学会の危機管理委員会がICUのための災害時対応と準備についてのガイダンスで明確にしている。その中では、MCI(masscasualtyincident:多数傷病者事故)の規模に応じた段階的なICU拡張計画を、場所(Space)、人員(Staff)、医療 機器・器材(Stuff)に分けて計画され、ICU災害マニュアル等に記載することが必要であるとしている。このマニュアルを構築するためには、ICUにかかわるすべての職種が共同し組織的に活動することがキーとなると考える。 ICU では日常から多種職がチームとして患者を管理できる業務環境を作っておくことが望ましい。ICU で業務をおこなう職種は医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士などであるが、発災の際にはそれぞれの職種の代表者で構成されたICU コアチームを編成し活動する。このコアチーム内でのリーダーはICU管理者である医師とする。複数のICUが存在する施設では、それぞれのICU でコアチームが構成され、それぞれのチームリーダーを統括するための統括管理者を病院責任者とした指示系統を作ることが重要となる。このコアチームにより組織化されたICUで活動する人員を一つのICU災害医療チームとして発災より活動を展開することが望まれる。