第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY4] ALL JAPAN!2020年東京オリンピック・パラリンピックコンソーシアムによる医療活動計画と危機管理

2019年10月5日(土) 10:10 〜 12:00 第1会場 (2F コンベンションホールA)

座長:森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科救急科学), 佐藤 憲明(日本医科大学付属病院)

[SY4-7] オリンピック開催時の感染対策

菅原 えりさ (東京医療保健大学大学院 感染制御学)

人が多く集まる場所で起きる健康被害で憂慮されるものの一つは「感染症」の蔓延である。その際、「パンデミック対応」という言葉をしばしば耳にするが、パンデミックとは世界的流行を意味し、現在これに該当する感染症としては「新型インフルエンザ」が筆頭である。これに対してわが国は平成24年に「新型インフルエンザ等対策特別措置法(法律第三十一号)」を制定し既に医療機関にはパンデミックに備えBCPの策定が求められている。その中万が一東京2020年大会開催時に「新型インフルエンザ」のパンデミックが発生していたなら、上記の法律により「東京2020大会」自体の開催も危ぶまれ、国家的な危機管理対応となってくる。

現実に目をむけると「東京2020大会」における感染症対応は、「パンデミック」というより、世界でしばしば発生する感染症の輸入頻度が高くなることへの警戒が主眼となろう。さらに、マスギャザリングのリスクにより、一般的なウイルス感染症(下痢嘔吐やかぜ症候群など)や国外より持ち込まれる感染症が想定外の集団発生(アウトブレイク)を起こす可能性や、それらの患者が結果的に病院に来院することに対する危機管理が重要なポイントだと考えられる。

厚生労働省は東京2020大会で「配慮な必要な感染症」を挙げている。それによると、麻疹、風疹、インフルエンザ、中東呼吸器感染症、蚊媒介感染症、感染性胃腸炎(食中毒含む)、結核等が挙げられこれらを想定した対応が現実的である。

一方、大会開催時には世界で発生している感染症の影響を受けることになる。大会時は平時より厳重な検疫体制やサーベイランス体制が敷かれることとなるが、注意深く情報収集することが肝要である。