第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY5] 経験から学び実践する大災害への備え

2019年10月5日(土) 14:40 〜 16:30 第1会場 (2F コンベンションホールA)

座長:佐々木 吉子(東京医科歯科大学大学院), 安彦 武(東北大学病院)

[SY5-4] 災害拠点病院の果たした役割と今後に向けた課題~やっぱり備えあれば憂いなし~

葛西 陽子 (医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院  急性・重症患者看護専門看護師 看護管理室 副看護部長)

2018年9月6日午前3時7分、北海道胆振地方中東部を震源としたマグニチュード6.7震度7の地震が発生し、震源地から遠く離れた札幌市内でも液状化現象による土地・建物への被害が生じた。さらに、その後火力発電所の停止に伴い、電力のバランスが崩れ道内ほぼ全域が大規模停電(ブラックアウト)に陥るという想定外の状況が発生した。災害に想定外はつきものである。この想定外の事態に対し災害拠点病院である当院が実際に行った活動と経験から見えた課題、今後に向けた対策について報告する。
 当院は札幌の北西部に位置する災害拠点病院である。これまで災害拠点病院運営委員会を中心に2015年より避難訓練・受け入れ訓練を定期的に開催してきた。今回の地震では発災後3:50に災害対策本部が立ち上がり、その後の会議で第1次非常配備が発令、一般外来、定期検査、定期手術の中止が決定された。非常に短時間で意思決定がされたため、「外来は中止するが来院した患者にどの様に対応するか」など、予想される問題に対して策を講じる時間を作ることができた。これらは、何度となく災害対策本部の立ち上げから意思決定までの訓練を重ねてきた成果と思われる。
 周辺医療機関からの多数の透析患者依頼、人工呼吸器患者の転院依頼、産科患者の転院依頼、在宅呼吸療法患者への酸素貸与や充電などに対し、周辺地域の医療機関と物的・人的連携をとり、この危機を乗り越えられた。様々な部門が病院の方針に基づき、権限の範囲で「どうしたらできるのか」を自律して判断・行動を取った事が想定外を乗り越える鍵となった。
 一方で、全く予期できなかった事、予期していたが対策まで至っていなかった事も多数存在している。これらの災害を体験して改めて見えた事、課題として上がった事を次の備えにどう繋げていくかが災害拠点病院としての使命を果たす事に繋がると考える。
 今回のシンポジウムでは、「備えてた事」「備えられなかった事」について当院の活動の実際を報告し「どう備えるか」について検討していきたい。