第21回日本救急看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY6] これからのRapid Response System 組織に応じた危機管理システム創り

Sat. Oct 5, 2019 10:10 AM - 12:00 PM 第3会場 (2F 中会議室201)

座長:上澤 弘美(総合病院 土浦協同病院), 川原 千香子(日本臨床救急医学会医療安全推進委員会RRS小委員会)

[SY6-2] 看護師の立場から振り返る~大学病院である当院のRRSの現状と課題~

栁澤 三穂 (獨協医科大学埼玉医療センター)

当院は外来、検査部門において患者の状態変化が生じた際にかける緊急コールを「Dr.ハリーコール」と呼んでいる。また、病棟における患者の状態変化時の緊急コールは、救急医療科担当医師のPHS番号と定め、状態変化している患者の相談や応援要請を受けている。当院の「Dr.ハリーコール」が開始されてから現在までをRRSの4つのコンポーネントに沿って振り返り現状と課題を報告する。

求心性視点として、「Dr.ハリーコール」を開始して以来、起動基準は設けられておらず、オーバートリアージを容認する形をとっている。「Dr.ハリーコール」「院内患者応援要請コール」に対する啓蒙活動は、救急医療科教授による院内講演会をはじめ、コール番号が記載されているパウチを各病棟と各部門に設置している。また、リハビリ実施中患者の緊急コールは「NSハリーコール」と呼んでおり、呼吸、循環、意識に分け起動基準を設け、救命救急センター看護師が理学療法士や作業療法士、言語聴覚士に向けて、患者の変化に気づけることを目的とした勉強会を実施し、「何か変」「不安だ」と感じた際はいつでもコールが可能である事を伝達している。

明確な起動基準が設けられていないことで、応援要請をしやすい環境ではある。しかし、医療安全対策部門が集計をしている急変対応事例件数と応援要請件数には乖離がある。明確な起動基準は、医師への報告や応援要請に至る行動のきっかけになると考える。明確な起動基準を設けた上で、オーバートリアージも容認し、スタッフの心配と感じている患者の状態をともにアセスメントできる体制が必要であり、また、患者の状態変化をいち早く気づける観察力の向上やSBARでの報告を定着するための活動が課題である。

遠心性視点として、「Dr.ハリーコール」による患者の初期対応は、有志からなる院内のスタッフにより行われている。その後の検査や処置対応は救命救急センター医師と看護師が引き継ぎ担っている。院内患者への応援要請は、救急医療科医師と救命救急センター看護師が当該部署にて当該スタッフと共に対応を行う。リハビリ実施中患者の状態変化時の緊急コール対応は、救命救急センター看護師により初期対応を行っている。

応援要請のしやすさは初動に影響すると考える。多数の職員が在籍していることにより、部署間や部門間での顔のみえる関係構築ができていない現状があり、このことが、要請への躊躇や要請までに至っていないと考える。そのため、応援要請をされた現場では、周囲のスタッフへの対応にも注意を払い、その場において要請をしやすい関係を構築できるように心がけている。また、チームへの信頼度を高めることも必要である。救命救急センターのスタッフのスキルアップを継続的に行い、各部署や各部門のスタッフと信頼関係を構築していくことが課題である。

評価と改善として、昨年度より本格的に検証を開始している。検証は、救急医療科教授や集中ケア・救急看護認定看護師、救命救急センター看護師による専門性のある意見を聞ける場として、病棟看護師が実施した一連の行動を客観的に自身で振り返るきっかけとなっている。

管理面からの視点として、当院はRRTとして稼働はしておらず救急医療科医が担っている。急変対応チームとして確立されていなくとも、現状は応援要請に応じられている。そのため、専門チームとして確立されなくても、継続した活動は可能であると考える。しかし、相談、状態悪化を予防する介入も含めて活動拡大を図るのであれば、幅広く「相談できる場所」としての体制整備と啓蒙が必要であると考える。