第21回日本救急看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY7] 【日本臨床救急医学会共催】電話相談と危機管理ー見えない病態を判断する

Sat. Oct 5, 2019 2:40 PM - 4:30 PM 第4会場 (3F 中会議室301)

座長:櫻井 淳(日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野), 伊藤 雪絵(奈良県立医科大学附属病院 生命倫理監理室)

[SY7-3] 電話救急医療相談事業における質の管理への取り組み~#7119実践~

赤尾 いづみ (公益財団法人 大阪市救急医療事業団 救急安心センターおおさか#7119)

救急安心センター事業(#7119)は、救急搬送需要増大の社会的背景から「救急車利用の適正化」を目的に事業が開始され、2019年4月1日現在では、9都府県5都市が相談事業を実施しており、人口カバー率においては42.3%となった。
事業効果としては、不要不急な救急車利用の抑制だけではなく、潜在的な救急患者を相談により救いだし、受療行動への支援を行うことや、適切な受療タイミングを示すことで医療機関への負担軽減などが期待されている。
本事業は、医学的知識に基づき検証されたプロトコルを用いて緊急度を判定し、適宜担当した看護師の経験・知識を基に医師の助言・通報者の背景によって総合的に判断するものである。しかし、電話相談は他のスタッフの対応内容を把握することが難しく『質』を担保していくには組織としての取り組みが必要不可欠である。
救急安心センターおおさかでは、開設時より質の向上にむけて看護師教育を行ってきたが、指導の方向性を統一できなかった結果、プロトコルの軽視、診断傾向、医学的知識の披露など本事業における基本的なルールの逸脱を認めた。
本年1月に開催された、日本臨床救急医学会・日本救急看護学会合同企画「救急電話相談の現況と展望」のシンポジウムは、全国の関係者が集い、上記の内容を含めて各センターで実施されている質の担保と向上に関わる取り組みについてそれぞれが意見交換できる場となった。その時のことを参考に当センターでも今後の教育体制について見直しを計画している。
#7119事業の普及が進む中、プロトコルは改訂され適正化が図られている。一方、それを実際に使用し緊急度を判定する看護師の質の評価基準、教育体制については未だ十分ではない。
今回、#7119事業を実施している8都県(大阪府を除く)5都市に【対応内容の検証】【看護師の教育体制】【業務フローの整備】についてのアンケート調査を依頼した。その結果、対応内容の検証、教育体制は地域毎にバラつきが認められた。
これまでも、各地域の救急医療体制の課題や背景等が異なることから起こる運営上の課題はあったが、今回のアンケートによって、よりバラつきは明確となった。
今後は、看護師が電話相談の対応を行う上で、判断の基準となるプロトコルをさらに理解した上で経験を積み、対応をデータベース化し、実施地域単独ではなく#7119全体として、質の評価基準を示すとともに、私たち看護師が主体となって問題提起し、教育体制の整備を他センター看護師と協力し進めていく必要がある。