第21回日本救急看護学会学術集会

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ワークショップ

[WS1] 【日本中毒学会共催】身近な救急病態“中毒”に強くなる!

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 10:30 AM 第5会場 (3F 中会議室302)

座長:古厩 智美(さいたま赤十字病院 高度救命救急センターHCU)

[WS1] 身近な救急病態“中毒”に強くなる!

杉田 学1, 早川 桂2, 髙見 浩樹1 (1.順天堂大学医学部附属練馬病院, 2.さいたま赤十字病院)

中毒とは,生体の外部より化学物質が侵入して有害な生体作用を生じることの全般を指し,多くの場合過量服用によって引き起こされるが,患者の状態によっては標準的な投与量で起こることもある.全ての医療従事者は,自分の投与した薬物によって有害な事象が引き起こされることを認識し,その標準的治療を知っておく必要がある.看護師も日常的に中毒患者の診療に関わっているが,他の疾患群に比べて中毒に関して体系的に学ぶ機会が少ないため,苦手意識を持っていることも多いかもしれない.そこで今回は中毒に関する一般的知識を解説し,臨床的に危機的状況を回避するだけで無く,中毒患者のケアや指導を考えながらキャリアアップにつながるワークショップを企画した.急性中毒に対して抱く苦手意識は,多くの場合専門的治療に対する知識不足と,多くの中毒患者の背景に精神疾患が存在することによるものである.前者の専門的知識に関しては一般的な臨床推論に近く,一度体系的に学べばそれほど難しいものではない.また後者の精神疾患に関しても,急性期にはあまり問題になるものでないばかりか,身体的に治療が終了したあとの精神的なケアにこそ看護師が果たす役割は大きいのである.本ワークショップで,実践的に急性中毒に対する対応を議論することで,苦手意識は払拭できるだろう.

急性中毒の治療は,①一般的な全身管理,②中毒原因物質の特定,③体内への吸収を阻害する,④既に吸収された物質を解毒・拮抗あるいは排泄促進する,4段階で行われる.世界的にみると,AACT(the American Academy of Clinical Toxicology)とEAPCCT(the European Association of Poisons Centres and Clinical Toxicologists)が1997年に中毒治療の標準化を図る目的にPosition paperを発表し,世界60カ国で承認された.我が国では日本中毒学会が「急性中毒の標準治療」を2003年に発表している(現在改訂中).また中毒診療では患者の症状・徴候や検査データ,心電図所見などの情報を組み合わせて中毒物質を推定するトキシドロームという考え方があり,看護師が普段ケアの一環として行なっているバイタルサインや身体症状の観察で得られる情報が中毒の鑑別を進める際に重要となる.

本ワークショップを通じて,苦手意識を持っている看護師が中毒診療について理解すれば,実臨床の中で有益な観察や情報が看護師の観察によってもたらされ,多くの患者に取って良好な予後に繋がるものだと考える.是非ワークショップに参加していただき,楽しみながら日々感じている苦手意識と疑問を解決していただきたい.