[EL11-01] 貧困・社会経済格差と不健康―医療利用の背景をふまえた多面的支援
Keywords:社会経済格差、健康の衡平、衡平志向の医療、4.多面的支援、アドボカシー
新型コロナウイルス感染症は、グローバルな影響を及ぼし、貧富の差、不平等を拡大する作用を当座もたらしている。このような中、健康格差の縮小や医療アクセスの衡平といった理念の実現を追求していくとすれば、医療関係者には、あらためて社会・経済的格差や貧困が健康と人々の生活にどのように影響を与えるかを理解し、臨床的な対応において患者の背景にある状況を推察し、関与していくことが重要である。本教育講演では、この課題を考える上で重要と思われる事項を以下のアウトラインに沿って述べる。
1 グローバルなアジェンダとしての健康の衡平
過去30年間の間で、健康の衡平(health equity in health) が、例えば、SDGsにみられるような国際社会の課題となるとともに、各国の政策上の課題となってきている点を、いくつかの著明なレポートなどに言及して紹介する。高所得国で貧富の格差が最も大きい国である米国においても、健康の衡平の追求が―少なくとも医療関係者においては―重要課題とされてきている点についても言及したい。また、健康の衡平、医療アクセスの衡平などの、国際的に共有されている重要概念を説明する。
2 貧困・社会経済格差と不健康に関わる理論とエビデンス
貧困と社会経済格差(socioeconomic inequalities)の概念、それらの違いを説明した上で、不健康との関連についての研究の進展を概観する。その上で、いくつかの例についての、今日的な知見を例示しつつ、社会経済状態が疾病の罹患に関与する経路についての代表的モデル(Marmot et al. のものなど)を示し、それに対する戦略的な対応方向を議論する。
3 日本における貧困・社会経済格差
日本における貧困・社会経済格差についての動向を例示しながら、社会科学における貧困をめぐる理論やモデルを紹介する。また、生活困難・貧困と医療の利用、健康に関する知見の中から利用可能なものを取り出し、日本における課題を考察する。
4 多面的支援と医療からのアドボカシーに向けて
最後に、「衡平志向の医療(equity-oriented health care)」や「社会的処方(social prescribing)」、「利用等支援サービス(enabling services)」などの、近年注目されている概念を紹介し、臨床場面における健康の衡平に向けた多面的な支援のあり方とアドボカシー(社会への問題提起の活動)の可能性について考えたい。
1 グローバルなアジェンダとしての健康の衡平
過去30年間の間で、健康の衡平(health equity in health) が、例えば、SDGsにみられるような国際社会の課題となるとともに、各国の政策上の課題となってきている点を、いくつかの著明なレポートなどに言及して紹介する。高所得国で貧富の格差が最も大きい国である米国においても、健康の衡平の追求が―少なくとも医療関係者においては―重要課題とされてきている点についても言及したい。また、健康の衡平、医療アクセスの衡平などの、国際的に共有されている重要概念を説明する。
2 貧困・社会経済格差と不健康に関わる理論とエビデンス
貧困と社会経済格差(socioeconomic inequalities)の概念、それらの違いを説明した上で、不健康との関連についての研究の進展を概観する。その上で、いくつかの例についての、今日的な知見を例示しつつ、社会経済状態が疾病の罹患に関与する経路についての代表的モデル(Marmot et al. のものなど)を示し、それに対する戦略的な対応方向を議論する。
3 日本における貧困・社会経済格差
日本における貧困・社会経済格差についての動向を例示しながら、社会科学における貧困をめぐる理論やモデルを紹介する。また、生活困難・貧困と医療の利用、健康に関する知見の中から利用可能なものを取り出し、日本における課題を考察する。
4 多面的支援と医療からのアドボカシーに向けて
最後に、「衡平志向の医療(equity-oriented health care)」や「社会的処方(social prescribing)」、「利用等支援サービス(enabling services)」などの、近年注目されている概念を紹介し、臨床場面における健康の衡平に向けた多面的な支援のあり方とアドボカシー(社会への問題提起の活動)の可能性について考えたい。