第22回日本救急看護学会学術集会

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教育講演

[EL2] 教育講演2

「人生100年時代を働く女性のライフコースー多様な選択肢とwell-beingー」

演者 斧出節子(京都華頂大学現代家政学部 現代家政学科 教授)

[EL2-01] 人生100年時代を働く女性のライフコースー多様な選択肢とwell-beingー

○斧出 節子1 (1. 京都華頂大学現代家政学部 現代家政学科 教授)

Keywords:結婚、家族、少子高齢化、就労、ワーク・ライフ・バランス、ジェンダー間格差

長寿化により、一生の長さを100年と想定することが必要となってきた。社会においても、個人においても、生活のニーズの変化に対応するシステムを再構築していくことが近年の課題となっている。それに加えて、このたびの新型コロナウィルスの世界的な感染状況も、その必要性をさらに大きくしている。

日本においては雇用者化が進んだ高度経済成長期に、現在の私たちの生活の基盤となるライフスタイルが広く定着した。誕生から教育期間を経てみんなが結婚し、男性が一家を支える稼ぎ主となり、女性は家事・育児・介護といった家庭役割をになうという「ライフサイクル」が当然視されるようになった。その結果、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業体制が根づいてきた。現在は多くの場合、男性が主な稼得者であり、女性は家庭役割プラス補助的な稼得者という体制になっている。

しかし経済分野では、工業化からグローバル化やIT化といった大きな流れが押し寄せ、日本の経済構造が大きく変容している。そのような状況下で、旧来のみんなが結婚をし、男性が経済的に家族を養うというスタイルで生活を安定させることは非現実的なものとなっている。

また、このライフスタイルのジェンダー間格差が問題とされてきた。女性が経済的弱者になること、女性の高学歴化が進むなかで女性の能力が社会に還元されないこと、女性自身の自己実現が達成されにくいこと、また、男性自身も一家の稼ぎ主以外の選択をしにくいといういうような、個人にとっても社会にとってもジェンダー間格差はマイナスの要素が大きい。

長寿化と同時に少子化が生じ少子高齢化という人口構造は、さらに社会全体に及ぼす影響、個人に及ぼす影響を重大なものにしてしている。

私たちが直面している社会状況のなかで、人生における危機を乗り越え、ひとりひとりのwell-beingが達成され、かつ社会のニーズにもこたえることができるライフスタイルと、それを可能にする条件とはどのようなものなのだろうか。日本における少子高齢化、就労、結婚、家族、ワーク・ライフ・バランス、ジェンダー間格差などのキーワードをもとに、現状の課題を明らかにしていく。また、EUにおける人々の試みなども参考にしながら考えていきたい。