[EL3-01] 大阪の「あいりん地区」の変容と今後の課題
Keywords:あいりん地区、貧困、日雇労働者、高齢化、まちづくり、サービスハブ
1960年代の高度経済成長期から80年代にかけて多くの日雇労働者で溢れた「あいりん地区(釜ヶ崎)」では、1990年代にはホームレスの増加、2000年代以降は単身高齢男性の生活保護受給者の増加、そして2010年代ではこれらに加えてインバウンド・ラッシュという現象が生じ、目まぐるしく変化してきた。これにともなって、住民の健康をめぐる問題はもちろん、様々な社会的課題がこのまちに集積することとなった。こうした変容を踏まえて、2012年からこのまちの今後のあり方を検討することとなり、地域の町会組織・支援組織・行政機関(国・府・市・区役所)・有識者から構成される「あいりん地域のまちづくり検討会議」が組織され、議論が重ねられてきた。報告者もまたこの検討会議のメンバーであるが、報告では、今日のあいりん地区の課題とビジョンを以下のように整理する。
第一は、就労支援である。あいりん地区は依然として日雇労働者数の求人・求職の拠点としての役割を果たしている。しかし、この10年余りの間に、なんらかの生きづらさや就労課題を抱えた人々の流入者が増えており、彼らへの支援も求められている。具体的には、建設業以外の就労先の紹介、中間的な就労体験の確保などにどのように取り組むかが問われている。
第二は、福祉的支援である。この地域に暮らすホームレスや単身高齢者だけでなく、新たな流入者においても生活・健康・こころの支援を必要とする人々が多い。すでにこの地域にはこうした支援を担う多くの社会資源が育っているが、こうした支援の質をより高めるために、それぞれの組織の地域連携拠点システム(仕事・住まい・福祉・医療などを結ぶサービスハブ)の構築が課題となっている。
第三に、現在の高齢化が進むとその結果として急激な人口減少に至りかねないことから、「地域に子どもの声が広がる子育て・子育ちしやすいコミュニティ」の構築が必要と考えている。多様な世帯・世代の共生・共助が可能となる社会環境づくりが問われている。
第四は、この地が交通の要所に位置していることによりインバウンドが増加していることに伴う課題である。この増加にともなってグローバル資本による客室単価の高いホテルの建設や民有地の売買が急速に増えてきている。この動きは、いわゆるジェントリフィケーションにつながる可能性が高く、それによって多くの低所得層が居住場所を失う可能性がある。この動きをどう食い止めるかが課題であり、またこうした資本との連携によって地域住民の雇用の拡大につなげる道を探ることも課題となってくるだろう。
こうした一連の課題解決にあたり、今まさに大きな焦点となっているのが、あいりん総合センター跡地の利用のあり方である。具体的には、労働施設だけでなくサービスハブの拠点づくり、そして賑わいや地域活性化の拠点づくりなどをどのように組み合わせて進めるのかが問われている。
なお、報告は、以下のような構成にしたがって行う。
1.あいりん地区の現状:住民の就労と生活、福祉、居住と宿所
2.健康をめぐるいくつかの特徴
1)大阪社会医療センター患者の特徴
2)健康と救急搬送からみた西成区の特徴
3.「西成特区構想 まちづくりビジョン有識者提言」
1)再チャレンジを可能にするサービスハブの構築
2)空間再生の仕組みと主体づくり
4.「あいりんのまちづくり検討会議」「エリアマネジメント会議」の取り組み
1)あいりんのまち検討会議
2)エリアマネジメント会議
5.「まちづくりビジョン」の具体化に向けて
第一は、就労支援である。あいりん地区は依然として日雇労働者数の求人・求職の拠点としての役割を果たしている。しかし、この10年余りの間に、なんらかの生きづらさや就労課題を抱えた人々の流入者が増えており、彼らへの支援も求められている。具体的には、建設業以外の就労先の紹介、中間的な就労体験の確保などにどのように取り組むかが問われている。
第二は、福祉的支援である。この地域に暮らすホームレスや単身高齢者だけでなく、新たな流入者においても生活・健康・こころの支援を必要とする人々が多い。すでにこの地域にはこうした支援を担う多くの社会資源が育っているが、こうした支援の質をより高めるために、それぞれの組織の地域連携拠点システム(仕事・住まい・福祉・医療などを結ぶサービスハブ)の構築が課題となっている。
第三に、現在の高齢化が進むとその結果として急激な人口減少に至りかねないことから、「地域に子どもの声が広がる子育て・子育ちしやすいコミュニティ」の構築が必要と考えている。多様な世帯・世代の共生・共助が可能となる社会環境づくりが問われている。
第四は、この地が交通の要所に位置していることによりインバウンドが増加していることに伴う課題である。この増加にともなってグローバル資本による客室単価の高いホテルの建設や民有地の売買が急速に増えてきている。この動きは、いわゆるジェントリフィケーションにつながる可能性が高く、それによって多くの低所得層が居住場所を失う可能性がある。この動きをどう食い止めるかが課題であり、またこうした資本との連携によって地域住民の雇用の拡大につなげる道を探ることも課題となってくるだろう。
こうした一連の課題解決にあたり、今まさに大きな焦点となっているのが、あいりん総合センター跡地の利用のあり方である。具体的には、労働施設だけでなくサービスハブの拠点づくり、そして賑わいや地域活性化の拠点づくりなどをどのように組み合わせて進めるのかが問われている。
なお、報告は、以下のような構成にしたがって行う。
1.あいりん地区の現状:住民の就労と生活、福祉、居住と宿所
2.健康をめぐるいくつかの特徴
1)大阪社会医療センター患者の特徴
2)健康と救急搬送からみた西成区の特徴
3.「西成特区構想 まちづくりビジョン有識者提言」
1)再チャレンジを可能にするサービスハブの構築
2)空間再生の仕組みと主体づくり
4.「あいりんのまちづくり検討会議」「エリアマネジメント会議」の取り組み
1)あいりんのまち検討会議
2)エリアマネジメント会議
5.「まちづくりビジョン」の具体化に向けて