第22回日本救急看護学会学術集会

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教育講演

[EL6] 教育講演6

「救急医療における看護師の危機対応能力」

演者 木澤晃代(日本大学病院 看護部 看護部長)

[EL6-01] 救急医療における看護師の危機対応能力

○木澤 晃代1 (1. 日本大学病院 看護部 看護部長)

Keywords:救急医療、危機対応能力、省察的実践

救急医療に携わる看護師は様々な危機と直面します。突発、突然の状況に、瞬時に全体像を捉え、考えながら行動することは、救急看護師ならではの高度な臨床実践能力であるといえます。危機対応とは、まず危機を察知、予見することから始まります。また、危機にどれだけ早期に対応でき、危機を回避もしくは最小限にすることが重要であり、その後の経過を左右します。救急看護師の危機対応としては、「直接的な患者への生命の危機対応」「生命の危機状態にある患者の家族および関係者への危機対応」「時間的猶予がない状態での医療スタッフとの交渉、調整」「治療方針に基づく患者家族の意思決定支援」「医師の治療方針に関するジレンマ」「医療安全の対応」「局地災害、大規模災害での対応」など多岐にわたっています。救急医療の特徴としては、現状把握と分析に基づく実践の時間軸が早いことがあげられます。同じような症例があったとしても、まさに個別的で瞬時の判断、決断が求められます。根拠に基づく知識・技術の習得、均質なケアの提供のための教育、知識を経験値によって熟成させ、概念化する能力を高めることが重要です。そして、常に最悪の状態を念頭に置き、準備や段取りを良くすること、省察的実践によりコミュニケーションを駆使し、チームの総合力を推進するコーディネーターとしての能力も必要です。しかしながら、使命感や責任感を持つあまり、倫理的課題の大きい症例や、社会的ジレンマに対し、時に無力感や喪失感によって心身のバランスを崩すことも少なくありません。「自身のメンタルヘルスとワークライフバランス」について個人の調整はもちろんのこと、組織的な取り組みが看護師の危機対応能力を最大限に発揮できるための支援だといえます。