第22回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

教育講演

[EL9] 教育講演9

「重症熱傷の評価と管理」

演者 森田栄伸(島根大学医学部 皮膚科学 教授)

[EL9-01] 重症熱傷の評価と管理

○森田 栄伸1 (1. 島根大学医学部 皮膚科学 教授)

Keywords:重症熱傷

熱傷は誰でも一度くらいは経験する皮膚傷害である。痕が残らず治癒するか、瘢痕が残るかは誰しもが気になるところである。熱傷は熱による皮膚組織の傷害で、その重症度は深達度と受傷範囲により決まる。深達度はI度、II度、III度に区分され、II度はさらに浅逹性II度と深逹性II度に細分される。痕が残るか残らないかの境目は浅逹性II度か、深逹性II度かである。つまり浅逹性II度では皮膚の再生が見込まれるため保存的加療で瘢痕を残さず治癒するが、深達性II度以上では皮膚の再生が見込まれないため瘢痕化して治癒するか、またはデブリドマン、皮膚移植など外科的処置が必要となる。浅逹性II度と深逹性II度は、ある程度臨床的な観察で区別可能で、水疱底の性状、痛みの程度などで大まかに判断できる。浅逹性II度では水疱底が赤色のことが多く痛みが強いが、深達性II度では水疱底が白色で痛みが軽い。一方、受傷面積が広いと重症となり、一般にII度熱傷が体表面積の30%以上、またはIII度熱傷が体表面積の10%以上で重症熱傷とされる。重症熱傷では、受傷後に循環血液量の不足から腎臓などの臓器傷害をきたすリスクがあるため、十分な輸液が必要である。受傷面積の評価には成人では9の法則、小児では5の法則が簡便な評価法として臨床現場で利用されている。受傷後に必要な輸液量は受傷面積に基づいてBaxter法により計算される。広範囲の熱傷では、治癒までの期間が長く感染のリスクが高くなるため、早期に入浴、洗浄の処置を併用する。広範囲熱傷の予後は熱傷予後指数(熱傷指数に年齢を加算)で評価し、110を超えると予後不良である。近年は外科的処置に加えて、培養表皮が重症熱傷に利用されている。