第22回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-01] 救急看護経験が少ない看護師に対する外傷初期看護に関する部署内教育

○小高 貴直1、小池 加容1、須田 貴之1、中井 紘平2 (1. 日本赤十字社 大阪赤十字病院 救命救急センター、2. 日本赤十字社 大阪赤十字病院 集中治療部)

Keywords:教育、外傷看護

【はじめに】当院救命救急センターでは、内因性疾患による受診が大半を占めており、外傷症例は稀である。一方で災害拠点病院に指定されており、大規模災害の際には外傷患者の診療を担う可能性がある。しかし、当院救命救急センターのスタッフは、救急看護経験年数が5年未満のスタッフが全体の60%を占めており、外傷症例の経験が少ないスタッフが多い。そこで、救急看護経験が少ないスタッフに対して、勉強会を実施した。その方法と効果について報告する。
【目的】救急看護経験が少ない看護師に対する有効な外傷初期看護に関する教育方法を考察する。
【方法】救急看護経験5年未満のスタッフを対象とし、外傷初期看護に関して「苦手だ」と感じる事に関してアンケート調査を行った。アンケートの回答をもとに、勉強会の資料を作成し、座学形式の勉強会を実施した。勉強会の参加者には、勉強会後に、事後アンケートを実施し、内容の理解度を評価した。評価項目は対象者の救急看護経験年数を鑑み、知識レベルとした。また、勉強会の質の保証のため、救急看護認定看護師3名の支援を得た。
【倫理的配慮】事前アンケートを行う際に、調査への参加は自由であること、調査結果を院外で発表する可能性がある事を説明し、アンケートの回答をもって同意したこととする旨を説明した。回収したデータは本調査以外に使用せず、分析後は裁断処分した。本調査はA病院看護部教育委員会の承認を得た。
【結果】対象者35名のうち、本調査に同意し、勉強会に参加した人数は14名であった。外傷初期看護に関する研修の受講歴がある者は0名であった。14名のうち、「外傷初期診療のアルゴリズムを知らない」と答えた者は、6名であった。また、「受け入れ準備と第一印象」に関して苦手だと回答した者は10名(71%)、「気道と呼吸の評価及びその蘇生処置」に関して苦手だと回答した者は11名(79%)、「循環の評価及びその蘇生処置」に関して苦手だと回答した者は8名(57%)、「意識障害に対する評価及びその蘇生処置」に関して苦手だと回答した者は10名(71%)、「体温評価と環境調整」に関して苦手だと回答した者は6名(43%)、「脊椎保護と体位管理」に関して苦手だと回答した者は9名(62%)であった。事前アンケートの結果より、「外傷初期診療のアルゴリズムの要点が説明できる」事を目標に勉強会の資料を作成した。事後アンケートでは「MISTの情報から病態を予測し、受け入れ準備ができる」と答えた者は12名(86%)、「致死的胸部外傷を列挙し、観察項目が言える」と答えた者は10名(71%)、「循環動態の評価に関する観察項目が言え、ショックの原因検索に必要な検査及び、ショックに対する対応が言える」と答えた者は11名(79%)、「切迫するDの要件が言え、切迫するDを認めた場合の対処が言える」と答えた者は11名(79%)、「外傷患者における脊椎保護と体位管理の方法が言える」と答えた者は8名(57%)、「体温管理の必要性が言える」と答えた者は10名(71%)であった。
【考察】事前アンケートと事後アンケート結果より、勉強会を通して、外傷初期診療アルゴリズムの要点を説明できるスタッフが増加した。事前アンケートの結果から、対象者にとって適切な目標を設定し、勉強会を実施した事で、有効な学習効果が得られたと考える。一方で、今回の勉強会では、知識を修得する事を目標としたため、臨床で行動が取れるか否かは不明である。今後、シミュレーションや症例検討を通し、実際に適切な行動が取れるように、継続した支援が必要であると考える。