第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-02] ACS患者のDoor to Balloon Timeに影響する要因についての文献検討

○若松 友香1、皆吉 採香1、平林 幸恵1、肥後 昌代1 (1. 鹿児島大学病院)

Keywords:Door to Balloon Time、ACS、救急外来

【目的】
急性冠症候群(ACS)は、冠動脈プラークの破綻により急速に冠動脈の閉塞や高度狭窄が起こることで心筋虚血が引き起こされる病態の総称である。心電図でST上昇のある心筋梗塞患者のPCIでは、最初の医療従事者との接触から少なくとも90分以内に初回バルーンを拡張し、再灌流を得ることが目標とされている。本研究の目的は、急性冠症候群(以下ACS)で緊急搬送された患者のDoor to Balloon Time(以下DTBT)についての先行文献から、DTBT延長に関係する看護側要因、患者側要因、患者を取り巻く環境的要因を分析し、DTBTの短縮につながる方法は何かを明らかにすることである。

【方法】
医中誌Web・PubMedでデータベース検索を実施した。具体的には、「ACS」「Door to Balloon Time」「緊急」「心筋梗塞」「カテーテル」「PCI」「時間」「初期対応」で検索、文献を収集、文献レビューを作成、考察した。

【倫理的配慮】
文献研究のため、倫理的配慮には該当しない。

【結果】
医中誌Web・PubMedに掲載された原著論文を対象に文献検索を行った。「ACS」「緊急」「心筋梗塞」「カテーテル」では25件、「Door to Balloon Time」では59件、「急性心筋梗塞」「PCI」「緊急」「時間」では210件、「急性冠症候群」「初期対応」では3件の論文が該当した。重複したもの、テーマの趣旨に該当しないものを吟味し、16件の論文を検討した。分析の結果、「リーダー看護師が中心となった役割分担」「看護師の能力向上に向けた取り組み」「他職種と連携し、チームワークの構築を図る」「当直体制の変更によるマンパワー強化」「施設・設備に関する利点」「来院からPCIまでのプロセスに関わる医療者側要因」「チェックリストの改訂による処置のマニュアル化」「発症から病院到着までの時間短縮に関わるプロセス」「適切なトリアージの実施による診断時間の短縮」「患者指導の充実による来院時間の短縮」「DTBTを延長させる患者側要因」のサブカテゴリーが抽出された。そこから「時間延長に関する患者側要因」「チームワーク・マンパワー強化」「看護師の能力向上」「環境・医療者側要因」「適切なトリアージ」「患者指導の重要性」のカテゴリーを抽出した。

【考察】
文献検討により、体制の確立ができていないことによるマンパワー不足、他職種間の連携やコミュニケーション不足、知識の不足などの医療者側要因、設備に関する環境的要因、患者や家族側要因がDTBTを延長させる要因となっていることが分かった。DTBT短縮に向け、フィジカルアセスメント能力を高めるための学習会の開催やチームワークの強化、処置のマニュアル化などの必要性が明らかとなった。また、救急隊と綿密に連絡を取り合い、患者の状況を早期に確認することで検査や処置の準備が円滑に実施することが重要であることが示唆された。
現在、当院では医師や放射線技師、臨床検査技師とカンファレンスを開催するなどの取り組みは行われていない。また、病院の構造上、救急外来からカテーテル室までは250mであり、移動に時間を要している。さらに、救急外来経験年数の浅いスタッフが対応することもあり、円滑に準備が行われていない現状がある。今回文献研究で得た結果を、スタッフへフィードバッグすることで、目標の共有が図れ、今後、シームレスなチームワークの構築につながることが期待される。