第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-05] 体系的アプローチを取り入れた救急外来看護記録の取り組みとその効果

○後小路 隆1、小川 奈奈1、弓掛 良一1、九十九 俊充1 (1. 社会医療法人 陽明会 小波瀬病院)

Keywords:救急外来、看護記録、体系的アプローチ

【はじめに】日本看護協会は、2005年に「看護記録および診療情報の取り扱いに関する指針」を作成した。この指針では、「診療 情報の提供の目的と看護者の役割を明確にする」ことや、「診療記録開示の目的に適う看護記録のあり方」を示している。看護師は最良の看護を継続して提供しなければならない。救急外来においても看護の継続性・一貫性の担保のために、その重要性は高い。近年、救急看護では救急車及び自主来院患者に対して「第一印象」、「生理学的評価」、「解剖学的評価」を用いて観察し、看護を必要とする人の情報を網羅的に収集することが求められている。A病院においても2020年1月より体系的アプローチを取り入れた看護記録を導入し実施している。その取り組みと効果についてここに報告する。【目的】体系的アプローチを取り入れた看護記録の効果を明らかにする【方法】1.体系的アプローチを用いた看護記録のフォーマットを作成し新しい看護記録を導入する前に記録内容についての研修会を3回実施した。2.導入開始後、各勤務毎に救急外来看護師が記載した看護師記録を確認し、その都度本人へ記録内容のフィードバックを実施した。3. 3ヶ月後に救急外来で勤務する看護師10名へ対し、質問紙調査票を用いてアンケートを実施した。【倫理的配慮】研究の趣旨を口頭と書面で説明し同意を得て匿名性に配慮した。また、A病院の看護部の承認を得て実施した。【結果】「看護記録の使いやすさについて」の問いに対して62.5%が「使いやすい」と回答し、「看護実践を証明する記録内容だと思うか」の問いに対しても50%が「大変そう思う」との回答であった。しかし、「この記録内容が、看護職の間で、看護記録を通じて看護実践の内容を共有することができ、継続性と一貫性のある看護実践が提供できると思うか」の問いでは、半数が「どちらでもない」、「あまり思わない」と回答がみられた。また、「個別性を踏まえた症状・検査結果のアセスメントに活かせる記録内容だと思うか」の問いについても同様の回答が認められた。自由記載では、「頭から、つま先まで大事な事を抜けなく観察できるようになったから」や「全身の観察項目がどのスタッフが行ってもできるところがいいと思った」など意見も認められたが、その一方で、「全てを理解し網羅するのは難しい」、「フォーマットが予めあることにより、アセスメント能力の低下は懸念される」などの意見も認められた。【考察】看護実践を証明する記録であると多くの意見が見られたことから、体系的アプローチを用いた看護記録は救急外来で働く看護師にとって有用な記録であると認識されていると考えられ、フォーマットにしたことで利便性も高いと考えられる。しかしそれぞれの診察所見の意味を十分に理解できていないなどの不安面や、フォーマットにしたことによってアセスメント能力の低下を危惧する意見などもあるため、こられの意見に対して、フィジカルイグザミネーションを深める取り組みやフォーマットの改定などまだまだ課題が多いことが示唆される。【結語】体系的アプローチを取り入れた救急外来看護記録の取り組みは、看護実践の証明や利便性の良さなどの効果が認められたが、記録の充実に向けたさらなる取り組みが必要である。