第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-08] Door to balloon timeの現状と課題

○鏡 顕1、加藤 朋子1、佐藤 真実1 (1. 山形県立中央病院 救急室)

Keywords:DTBT、STEMI、自己来院

 目的
 
A病院は三次医療機関に位置づけられており、2018年度の救急室受診人数は約14000人であり、その中には急性心筋梗塞も含まれ、緊急経皮的冠動脈インターベンション(以下PCI)を行っている。日本循環器学会では、急性心筋梗塞患者に対し病院到着から初回バルーン拡張までの時間(以下DTBT)を90分以内、12誘導心電図を病院到着後10分以内に施行することを推奨しており、DTBTは院内予後に相関する。そこでA病院のDTBT の現状を把握し今後の早期根本治療につなげたいと考え、救急室を受診し緊急PCIを行ったSTEMI症例のDTBT短縮に向けた課題を明らかにする。
 方法
 対象は2018年4月~2019年3月に緊急PCIを施行したSTEMI症例とした。データ収集は電子カルテから行い、受付時間、心電図施行時間、医師診察時間、心臓カテーテル室への入室時間、バルーン拡張時間を抽出した。自己来院は事前連絡や紹介の有無、トリアージの内容を参照した。収集したデータを来院方法や勤務別、トリアージ(JTASを採用)内容で比較検討した。
 倫理的配慮
 
所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
 結果
 
DTBT90分以内にできたのは全症例72件中38件であり、DTBT中央値は87.5分だった。心電図は96%が10分以内に施行できていた。DTBT90分以上の多くは重症例で気管挿管やIABPの挿入などの処置が必要だったこと、別疾患との鑑別に時間を要していた。来院方法別で比較すると、救急車が中央値で83.5分、自己来院が115分で自己来院の70%の症例で90分以上の時間を要していた。救急室滞在時間は、救急車来院が中央値で41分、自己来院が60.5分であり、19.5分の差があった。自己来院では、「事前連絡あり」のDTBT中央値が「連絡なし」より9分早かった。トリアージについては、すべて緊急を要するレベルと判断しており適切であったが、主訴が嘔気嘔吐など胸痛以外の症例は心電図までに時間を要していた。心電図施行時間が10分以上を要している症例のDTBTは90分を超過していた。勤務別では、DTBTは平日日勤帯、休日日勤帯、準夜帯では60%以上で90分以内であったが、深夜帯は14.2%と低かった。心電図施行時間は勤務に関わらず10分以内であった。
 考察 
 
DTBT90分以内に達成できたのは全体の52.9%であり、DTBTには患者の病態や来院方法、勤務帯などの要因が関連していることが明らかになった。来院方法では、救急車ではDTBT90分以内が56.4%、自己来院では30%であった。救急室滞在時間は、救急車が中央値で41分、自己来院が60.5分であり、約20分程度の差があったことからもDTBTに影響していると考える。心電図は、病院到着後10分以内に心電図施行できたのは全体の96%であった。救急車来院では救急隊の情報を来院前に得ることができ、ACSの可能性を考え優先的に検査できたと考えられる。自己来院でも、事前連絡がある場合は来院時の看護師コールを活用し、すぐに看護師が患者と接触できるよう取り組んでいる。また、トリアージの際にACSが疑われるときは、看護師判断で心電図施行していることも有効であると考えられる。来院方法では、救急車来院のDTBTが速く、救急車を促すためにもACSに特化した電話相談プロトコールの作成が必要である。勤務別では、深夜帯でDTBTの遅延が見られた。勤務帯により診療体制やマンパワーが異なるため、多職種で連携しDTBT90分以内という目標に向かい取り組んでいく必要がある。