第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-10] 救命救急センター看護師のエンゼルケアに関する問題点

○別役 祐弥1、三本 彩可1、宮川 佑紀1、池澤 友朗1、酒井 由夏1、町田 清史1 (1. 医療法人近森会近森病院救命救急センター)

Keywords:エンゼルケア、グリーフケア、救急看護

【研究の背景】救命救急センターで亡くなる患者のほとんどが突然死であり、家族の悲しみは計り知れない。エンゼルケアはその人らしい最期を支える重要なケアであり、患者の容姿を整えるだけでなく、残された家族の喪失感や悲しみを支え寄り添うための重要な役割を担っている。救急看護師として救急外来での看取りを考えることは重要な課題であり、A病院では心肺停止で搬入された家族への支援などの取り組みを行ってきた。しかし警察の介入や、次々に搬入される救急患者の対応などによりエンゼルケアに十分な時間を取ることが困難なことも多く、グリーフケアに繋がるケアが提供できているか、さらに自宅に帰ってから体に起こる変化まで考えたケアが行えていないのではないかと感じることがある。今回エンゼルケアに関する実態調査を行うことで、救命救急センターにおける問題点を抽出しエンゼルケアの質向上につなげたいと考えた。
【目的】エンゼルケアに関する実態調査を行い、A病院救命救急センターの問題点を明らかにする。
【研究方法】1.期間:2019年11月1日~2020年4月30日、2.対象者:A病院救命救急センター看護師69名、3.方法:院内マニュアルに沿った独自のアンケート用紙を使用し、エンゼルケアについての知識面・技術面・家族看護に関する実態調査を行った
【倫理的配慮】A病院看護部倫理審査の承認を得た
【結果】アンケート回収率85%、有効回答率89%であった。院内マニュアルを見たことがないと回答したものが55%であった。知識について不安があると回答したものが57%、技術について不安があると回答したものが51%であった。その内容は「ケアの手順がわからない」「家族ケアに不安がある」「ケアが統一されていない」であった。「洗髪を行っているか」の問いにERは86%が行っていない、病棟は81%が行っていると回答した。死後の変化について家族に必ず説明しているものが16%、行ったケアについて家族に必ず説明しているものが30%であった。
【考察】エンゼルケアの知識・技術に対して不安があるものが50%を超えており、その内容は院内マニュアルを参照することで解決できる内容がほとんどである。これは「院内マニュアルを見たことがない」ものが55%であることに関連し、マニュアルがうまく活用されていないことが明らかとなった。「洗髪を行っているか」では86%が行っていないと回答しており病棟とERでは「洗髪」の実施項目で著明に有意差を認めている。ERでは常に救急患者を受け入れることを優先しており、エンゼルケアに十分な時間を設けることが難しい。しかし、エンゼルケアがグリーフケアに繋がることを理解し家族に接していれば、洗髪ができなかったとしてもグリーフケアに繋がる支援ができるのではないかと考える。
 死後の変化について家族に説明することが重要であるが、実施率は16%と少数である。これは看護師自身が死後の変化について知識がないことや、死後の変化を家族に説明することで、からだの変化を目の当たりにする家族のショックを和らげることができることが理解できていないのではないかと考える。
 救急救命センターのエンゼルケアは代々受け継がれてきた方法など伝統に頼った手順で実践しているため、既存のマニュアルの手順を確認して実施することが必要である。さらにエンゼルケアに関する研修を行うなど、院内マニュアルに沿った教育を行っていく必要がある。