第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-15] 患者家族支援を目的としたカンファレンスから見えた、救急外来看護師と病棟看護師の視点の相違

○星野 正裕1、江上 千晶1 (1. 北里大学病院救命救急病棟)

Keywords:グリーフ、救急外来看護、患者家族支援

【目的】A病院三次救命救急・災害医療センターでは患者・家族支援のため多職種によるカンファレンスを行なっており、救急外来では独自のフォーマットを作成した(日本救急看護学会雑誌第21回supplement2019,O15-2参照)。救急外来では対象となる症例をフォーマットに入力しカンファレンスをしている。カンファレンスに参加する中で救急外来看護師(以下外来看護師とする)と救急ICU、救急病棟看護師(以下病棟看護師とする)が患者・家族に介入する視点を振り返ることで今後の患者・家族看護につながると考え、過去のカンファレンス症例からその傾向をまとめたため報告する。
【方法】2019/4/1から2020/3/31までに搬送された患者のうちカンファレンスの対象となった患者・家族を集計し、内容を分析する。集計は入院後1ヶ月間のカンファレンスを調査した。
【倫理的配慮】本研究はA病院医学部倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号:B20-038)
【結果】週1回おこなっているカンファレンスで外来看護師が対象とした症例は210件であった。外来看護師がカンファレンスの症例を選定する理由は「小児・若年者の死亡や自死89件(42%)」、「身体機能喪失46件(22%)」、「家族の強い動揺や家族との連絡調整34件(16%)」、「自傷行為16件(7%)」、「外来でDNARの方針決定15件(7%)」であった。病棟は273件の症例があり「身体機能喪失への受容支援56件(20%)」、「家族の動揺や自責などへのサポート55件(19%)」「金銭面の問題や転院・退院等に関するMSWとの調整48件(17%)」、「代理意思決定支援30件(10%)」であった。救急外来からの選定はなかったが病棟から選定された症例は127件あり、脳卒中(脳出血、脳梗塞)41件(33%)、蘇生後脳症14件(11%)、外傷12件(9%)が多く、その中に外来のカンファレンス必須対象である脊髄損傷、ストマ増設となる患者16件が病棟のみからカンファレンスの対象としてあがった。外来、病棟共にカンファレンス内容が同じ症例は31件あり、「家族の動揺や自責などへのサポート」、「身体機能喪失への受容支援」、「スティグマとなるような自傷行為、事件性症例」であった。
【考察】救急外来は救命が大きな役割であり、救急搬送となった患者・家族は短時間で告知を受け、意思決定を迫られる。外来がカンファレンスの対象となる症例を選択する中で死亡症例が多い理由として、死亡した患者家族へ唯一介入ができるのが外来看護師であり、死亡症例やDNARを選択する家族へ支援していくことが外来看護師の役割と認識している結果と考えられる。また、外来受診時に明らかに身体機能喪失による複雑性悲嘆のリスクが高いと判断される症例に対して介入がされているが、外来で脊髄損傷やストマなどカンファレンス必須対象としている症例が選定されていないことがあり、再度必要性について共有を図ることが重要と考える。外来と病棟では治療段階の違いや患者・家族が問題を受け止めるだけの時間的猶予の違いから視点の違いが生じることは自然な事と考える。外来治療の特殊性である外来でしか関われない症例への介入を今後も継続し、救命できた症例の中で多かった脳卒中等の患者に対して、外来から着目していく必要性を考えていきたい。