第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-22] 救急外来でのRapid Response System起動における既存基準とNEWS2の有用性の検討

○門田 清孝1、牛尾 哲平1、恒松 美輪子3、梯 正之3、中村 歩未1、二宮 彩乃1、真砂 美咲2、佐々邊 やよい1 (1. 広島大学病院、2. 公益社団法人地域医療振興協会 東京ベイ・浦安市川医療センター、3. 広島大学大学院 医系科学研究科 健康情報学)

Keywords:Rapid Response System(RRS)、National Eealy Worning Score2 (NEWS2)、救急外来

目的
当院救急外来でのRRS起動において、既存基準とNEWS2(表1)の有用性の比較を行い、当院においてどの様な起動基準を用いることが適切かを示唆すること。

方法
対象:2015/9/1~2019/8/31に当院救急外来に救急搬送後、緊急入院した患者。18歳未満、救急外来受診時に心停止、DNAR、入院の契機となった傷病名がアナフィラキシーショックやけいれんである患者、必要なバイタルサインに欠損がある症例は除外した。
分析方法:入院から24時間以内の重篤有害事象(以下有害事象:死亡、心停止、予定外ICU入室)の有無で2群分けし、ロジスティック回帰分析を行った。また、NEWS2点数と既存基準該当数の24時間以内の有害事象の予測能を比較するため、単変量ROC曲線を用いてカットオフ値、AUCを算出した。なお、24時間以内とした理由は、急変前の徴候は6~8時間前に現れるとされていることと、RRS起動の遅延時間分を考慮して決定した。いずれも統計学的有意水準は5%とした。

倫理的配慮
A病院疫学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:第E-1759号)。

結果
対象患者730名(平均値±SD:68.5±14.6歳、女性:35.2%、男性:64.7%)のうち、39例に有害事象を認めた。当院救急外来でのRRS起動件数は1000入院あたり221.6件であった。また、既存基準とNEWS2(7点以上)を遵守しRRSを起動した場合、1000入院あたり前者は530件、後者は314.9件となった。また、既存の起動基準に該当しているが、RRSが起動されなかった例は312件(60.1%)であった。
目的変数を24時間以内の有害事象の有無とし、説明変数を年齢、性別、NEWS2点数、既存基準該当数としてロジスティック回帰分析を行ったところ、NEWS2点数のみ有意差を認めた(p=0.0064,オッズ比:1.17,95%信頼区間:1.04-1.31)。既存基準該当数とNEWS2点数の単変量ROC曲線の比較においては後者のAUCが高かったが、統計学的な有意差は認めなかった(0.652vs0.719,p=0.0476)。また、それぞれのカットオフ値は既存基準:1.0点、NEWS2:5.0点であった。

考察
成熟した病院でのRRS起動件数は1000入院当たり25.8~56.4件であるとされており、既存基準を遵守した場合は過剰起動となる。また、既存の起動基準を満たしているがRRS起動がされなかった件数が多いことから、看護師は起動基準に加えて臨床判断に基づいてRRSを起動していることが示唆された。
本研究では、既存基準とNEWS2の診断精度に有意差を認めなかった。NEWS2のカットオフ値が、本来推奨されている7点と異なり、サンプル数不足などの影響が考えられる。NEWS2は既存基準よりも測定が複雑である点で劣る。一方、詳細に有害事象のリスクを階層化することが可能で、点数に応じた対応も示されおり、RRS起動の遅延を防止する可能性があると考えられる。既存基準、NEWS2それぞれの特徴を踏まえ当院でのRRS起動基準を検討する必要があると考える。

結論
24時間以内の有害事象の有無において、救急外来受診時のNEWS2点数は、ロジスティック回帰分析で年齢、性別、既存基準該当数で補正しても統計学的に有意な差を認めた。
NEWS2点数と既存基準該当数の24時間以内の有害事象の予測精度は統計学的に有意差を認めなかった。
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