[O10-02] 所属を超えた応援体制で運営する救急医療センターでの安全管理
~患者、スタッフを守るためにできること~
キーワード:新型コロナウイルス肺炎、リスク分析
【背景】
A病院は重症例や緊急性のある患者を受け入れる拠点病院であると同時に、感染症指定医療機関としての役割も担っている。
救急医療を提供するA病院の救急医療センター(以下救急外来)は重症病棟に所属し救急外来と兼務する看護師15名と他病棟等から応援体制で勤務する看護師約150名で運営されている。このような背景の中、対応方法や治療方法が不明確なCoronavirus Disease2019(以下COVID-19)が全国的に発生した。いつ収束するのか不確実な状況下の中で、救急医療に従事する看護師から対応方法や感染に対する不安の声が聞かれるようになった。
医療従事者の安全を担保しつつ、地域の患者に安心と安全、質の高い医療の提供を続けていかなければならない。そこで、患者と医療従事者をCOVID-19から守れる救急外来の環境の整備が必要となった。
【目的】
患者と医療従事者をCOVID-19から守れる救急外来の環境を整備する。
【倫理的配慮】
本研究は、所属施設倫理委員会の承認を得て実施した。
【方法】
実施した安全対策を振り返り、それぞれの対策からリスクを抽出した。分析は縦軸に頻度、横軸に危害をとったリスクマトリクスを活用した。マトリクスを4分割し頻度と危害の積が大きい部分を高リスク、小さい部分を小リスクとした。中リスク以上に対し、再対策を立てた。
まず、適切な個人用防護具(以下PPE)を選択できるように、感染管理認定看護師が作成したPPE選択方法のパウチを掲示し、装着状況を確認できるよう姿見を設置した。抽出したリスク(以下リスク)は、医師のPPE選択ミスによる感染やPPE脱時の感染で中レベルであった。対策として、医師への選択アドバイス、着脱方法の再確認を徹底した。
並行して次のような対策を行った。
①救急外来のゾーニングを行いイエローゾーンとグリーンゾーンの間には開閉可能な透明ビニールシートを設置した。ゾーニングにより減った処置室は、仮説処置室の増設により医療体制を維持できるようにした。リスクはビニールシートの汚染による感染拡大、繁忙時にゾーニングが遵守できなくなることによるグリーンゾーンの汚染で中レベルであった。対策として、ビニールシートの定期的な消毒、患者移送時の補助、可視化によるゾーニングの意識付けをした。
②救急搬送、ウォークイン全ての患者に対しCOVID-19専用問診票でスクリーニングを実施した。感染を疑う患者、心肺停止患者はすべてレッドゾーンへ搬入した。他患と交差しない搬入動線とした。リスクは無症状感染者へのスクリーニングの限界と、一部動線が交差してしまう構造上の問題で中レベルであった。対策として、スタッフの最低限のPPE(マスクとフェイスシールド)の徹底と、定期的な換気とアルコール消毒による環境整備を徹底した。
③COVID-19情報を一つのファイルに集約し、救急外来用対応マニュアルを作成した。救急外来における対応方法を可視化した。リスクは全スタッフ間の情報共有の限界で中レベルであった。対策として、シミュレーション教育、動画視聴など可視化教材を活用した。
【結果】
A病院救急外来において院内感染の発生はなかった。
【結論】
患者と医療従事者をCOVID-19から守る救急外来を作ることができた。現時点で医療圏内において新規のCOVID-19患者は発生しておらず、対策の効果を評価することはできないが、過去の事例において救急外来を経由した感染は認めていない。
リスク分析を繰り返していくことで、臨機応変な対応が要求される救急外来の安全管理の強化につながると示唆された。
A病院は重症例や緊急性のある患者を受け入れる拠点病院であると同時に、感染症指定医療機関としての役割も担っている。
救急医療を提供するA病院の救急医療センター(以下救急外来)は重症病棟に所属し救急外来と兼務する看護師15名と他病棟等から応援体制で勤務する看護師約150名で運営されている。このような背景の中、対応方法や治療方法が不明確なCoronavirus Disease2019(以下COVID-19)が全国的に発生した。いつ収束するのか不確実な状況下の中で、救急医療に従事する看護師から対応方法や感染に対する不安の声が聞かれるようになった。
医療従事者の安全を担保しつつ、地域の患者に安心と安全、質の高い医療の提供を続けていかなければならない。そこで、患者と医療従事者をCOVID-19から守れる救急外来の環境の整備が必要となった。
【目的】
患者と医療従事者をCOVID-19から守れる救急外来の環境を整備する。
【倫理的配慮】
本研究は、所属施設倫理委員会の承認を得て実施した。
【方法】
実施した安全対策を振り返り、それぞれの対策からリスクを抽出した。分析は縦軸に頻度、横軸に危害をとったリスクマトリクスを活用した。マトリクスを4分割し頻度と危害の積が大きい部分を高リスク、小さい部分を小リスクとした。中リスク以上に対し、再対策を立てた。
まず、適切な個人用防護具(以下PPE)を選択できるように、感染管理認定看護師が作成したPPE選択方法のパウチを掲示し、装着状況を確認できるよう姿見を設置した。抽出したリスク(以下リスク)は、医師のPPE選択ミスによる感染やPPE脱時の感染で中レベルであった。対策として、医師への選択アドバイス、着脱方法の再確認を徹底した。
並行して次のような対策を行った。
①救急外来のゾーニングを行いイエローゾーンとグリーンゾーンの間には開閉可能な透明ビニールシートを設置した。ゾーニングにより減った処置室は、仮説処置室の増設により医療体制を維持できるようにした。リスクはビニールシートの汚染による感染拡大、繁忙時にゾーニングが遵守できなくなることによるグリーンゾーンの汚染で中レベルであった。対策として、ビニールシートの定期的な消毒、患者移送時の補助、可視化によるゾーニングの意識付けをした。
②救急搬送、ウォークイン全ての患者に対しCOVID-19専用問診票でスクリーニングを実施した。感染を疑う患者、心肺停止患者はすべてレッドゾーンへ搬入した。他患と交差しない搬入動線とした。リスクは無症状感染者へのスクリーニングの限界と、一部動線が交差してしまう構造上の問題で中レベルであった。対策として、スタッフの最低限のPPE(マスクとフェイスシールド)の徹底と、定期的な換気とアルコール消毒による環境整備を徹底した。
③COVID-19情報を一つのファイルに集約し、救急外来用対応マニュアルを作成した。救急外来における対応方法を可視化した。リスクは全スタッフ間の情報共有の限界で中レベルであった。対策として、シミュレーション教育、動画視聴など可視化教材を活用した。
【結果】
A病院救急外来において院内感染の発生はなかった。
【結論】
患者と医療従事者をCOVID-19から守る救急外来を作ることができた。現時点で医療圏内において新規のCOVID-19患者は発生しておらず、対策の効果を評価することはできないが、過去の事例において救急外来を経由した感染は認めていない。
リスク分析を繰り返していくことで、臨機応変な対応が要求される救急外来の安全管理の強化につながると示唆された。