[O12-04] 要支援家庭発見時の医療者の初期対応について ―救急外来における実態調査―
Keywords:チーム医療、児童虐待
目的
A病院の救急外来で対応する要支援家庭の児童は、平日の日中に院内の児童虐待防止委員会(以下、委員会)へ報告・相談される。しかし、夜間・休日は委員会へ円滑に相談されない現状がある。その中で、要支援家庭の児童の対応として、緊急性の判断と、家族や他の診療科と再受診の日程を調整する必要があり、医療者は要支援家庭に対する一定の知識、対応力を持って、組織的に介入する事が重要である。今回、医師と看護師がどのように初期対応しているか実態を明らかにしたいと考えた。
用語の定義
要支援家庭とは、養育者の状況、児童の状況、養育環境に何等かの問題を抱え、それを放置する事で養育が困難な状況に陥る可能性がある家庭の事とする。
初期対応とは、要支援家庭と判断された児童を小児科医と委員会へ報告、支援の必要性を家族へ説明する事とする。
方法
期間:2015年4月~2019年3月
対象:救急外来を受診した0歳以上18歳未満の要支援家庭の児童で、委員会に報告された20症例
調査方法:診療録を用いる後方視的調査。以下の情報を抽出・分析する。患者情報(年齢、来院手段、来院時間)、診療録(診療科、内因・外因分類、家族への説明の有無とその内容)、報告・情報共有(小児科医への相談の有無、小児科医へ報告した職種、委員会へ報告した職種、児童虐待早期発見チェックリストの使用の件数と使用した職種)。
倫理的配慮
所属施設の倫理委員会の承認を得た(19-15)。
結果
年齢は0、1歳が7例、12~15歳が5例、他2~10歳でそれぞれ1~2例であった。来院手段はウォークイン13例、救急車6例、ドクターヘリ1例で、受診時間は8時~17時が4例、17時~8時が16例、特に20時~24時に12例受診していた。診療科は救急科14例、小児科4例、その他2例で、診断名を内因・外因で分類すると、内因3例、外因14例、家庭内暴力を目撃していた児童が家族の付き添いとして来院した症例は2例、不詳1例であった。家族への説明内容が診療録に記載されているものは11例で、医師が家族に要支援家庭であると説明した内容が記載されている症例は2例で、他9例は病状説明のみ記載されていた。看護師が看護記録を記載している症例は8例であった。小児科医へ相談、または介入があった症例は12例であった。職種毎の委員会への報告件数は小児科医7例、救急科医1例、看護師10例、その他であった。児童虐待早期発見チェックリストを使用して報告した職種は、救急科医と看護師で2例であった。
考察
症例の8割が夜間帯に受診しており、委員会へ報告や相談が円滑に行いにくい現状があった。ウォークイン受診を中心に10例を研修医が対応していたが、児童虐待早期発見チェックリストは使用していなかった。A病院のチェックリストは院内ホームページから誰でも使用出来るが、使用方法やタイミングは明記されていない。医療者に対する虐待対応の研修はされておらず、周知出来ていない事が要因の一つと考えられ、効果的に活用できるものに検討する必要がある。また、委員会への報告が最も多い職種が看護師であった事から、看護師が要支援家庭を委員会へ繋ぐ重要な役割を担っていると考える。しかし、看護記録を記載している症例が半数以下で、受診時の様子や家族の言動が要支援家庭と判断した根拠として重要である事の知識が乏しい。さらに、小児科医に相談した症例は12例で、救急科医や他の診療科の医師が対応していた。診療録や看護記録に記載する内容や相談経路の統一など、画一的な対応が必要な部分は院内マニュアルへ追加するなど、支援体制を整備する必要がある。
A病院の救急外来で対応する要支援家庭の児童は、平日の日中に院内の児童虐待防止委員会(以下、委員会)へ報告・相談される。しかし、夜間・休日は委員会へ円滑に相談されない現状がある。その中で、要支援家庭の児童の対応として、緊急性の判断と、家族や他の診療科と再受診の日程を調整する必要があり、医療者は要支援家庭に対する一定の知識、対応力を持って、組織的に介入する事が重要である。今回、医師と看護師がどのように初期対応しているか実態を明らかにしたいと考えた。
用語の定義
要支援家庭とは、養育者の状況、児童の状況、養育環境に何等かの問題を抱え、それを放置する事で養育が困難な状況に陥る可能性がある家庭の事とする。
初期対応とは、要支援家庭と判断された児童を小児科医と委員会へ報告、支援の必要性を家族へ説明する事とする。
方法
期間:2015年4月~2019年3月
対象:救急外来を受診した0歳以上18歳未満の要支援家庭の児童で、委員会に報告された20症例
調査方法:診療録を用いる後方視的調査。以下の情報を抽出・分析する。患者情報(年齢、来院手段、来院時間)、診療録(診療科、内因・外因分類、家族への説明の有無とその内容)、報告・情報共有(小児科医への相談の有無、小児科医へ報告した職種、委員会へ報告した職種、児童虐待早期発見チェックリストの使用の件数と使用した職種)。
倫理的配慮
所属施設の倫理委員会の承認を得た(19-15)。
結果
年齢は0、1歳が7例、12~15歳が5例、他2~10歳でそれぞれ1~2例であった。来院手段はウォークイン13例、救急車6例、ドクターヘリ1例で、受診時間は8時~17時が4例、17時~8時が16例、特に20時~24時に12例受診していた。診療科は救急科14例、小児科4例、その他2例で、診断名を内因・外因で分類すると、内因3例、外因14例、家庭内暴力を目撃していた児童が家族の付き添いとして来院した症例は2例、不詳1例であった。家族への説明内容が診療録に記載されているものは11例で、医師が家族に要支援家庭であると説明した内容が記載されている症例は2例で、他9例は病状説明のみ記載されていた。看護師が看護記録を記載している症例は8例であった。小児科医へ相談、または介入があった症例は12例であった。職種毎の委員会への報告件数は小児科医7例、救急科医1例、看護師10例、その他であった。児童虐待早期発見チェックリストを使用して報告した職種は、救急科医と看護師で2例であった。
考察
症例の8割が夜間帯に受診しており、委員会へ報告や相談が円滑に行いにくい現状があった。ウォークイン受診を中心に10例を研修医が対応していたが、児童虐待早期発見チェックリストは使用していなかった。A病院のチェックリストは院内ホームページから誰でも使用出来るが、使用方法やタイミングは明記されていない。医療者に対する虐待対応の研修はされておらず、周知出来ていない事が要因の一つと考えられ、効果的に活用できるものに検討する必要がある。また、委員会への報告が最も多い職種が看護師であった事から、看護師が要支援家庭を委員会へ繋ぐ重要な役割を担っていると考える。しかし、看護記録を記載している症例が半数以下で、受診時の様子や家族の言動が要支援家庭と判断した根拠として重要である事の知識が乏しい。さらに、小児科医に相談した症例は12例で、救急科医や他の診療科の医師が対応していた。診療録や看護記録に記載する内容や相談経路の統一など、画一的な対応が必要な部分は院内マニュアルへ追加するなど、支援体制を整備する必要がある。