第22回日本救急看護学会学術集会

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[O12] 一般演題12

[O12-05] 呼吸不全患者に対する高流量鼻カニュラ(ネーザルハイフロー)装着が呼吸困難の軽減に及ぼす影響

○難波 さおり1 (1. 市立池田病院 救急総合診療科)

キーワード:高流量鼻カニュラ、呼吸困難

【目的】呼吸不全患者に対する酸素療法として高流量鼻カニュラ(ネーザルハイフロー)が開発され、より高い濃度・流量・湿度の酸素吸入が可能となっている。実臨床において、ネーザルハイフロー装着後に客観的指標である酸素化の改善は確認しているが、主観的指標としての呼吸困難が軽減するかは十分に評価されていない。そこで、ネーザルハイフローを装着することにより主観的指標としての呼吸困難や様々な評価指標が改善されるのかについて明らかにする。
【倫理的配慮】院内倫理委員会の承認を得られた後に、対象者には文書で研究目的と意義、観察内容、研究協力への自由意志の保証、匿名性を保証すること、不参加・中止などによる不利益は生じないことを配慮した。得られた結果は学会で発表することについて説明した。
【方法】研究デザインは前向き観察研究でネーザルハイフローを装着する成人患者を対象とした。主要評価項目として呼吸困難(NRS)、SpO2呼吸数、心拍数を装着前、装着30分後、翌日の3点で評価した。副次評価項目は食事、睡眠、会話を装着前と翌日に評価。口渇、鼻痛、不快感、熱感、鼻出血は翌日のみ評価した。挿管下人工呼吸器抜管後、意識障害事例は除外とした。患者の臨床的背景は診療録から後方視的に検討した。統計処理はIBM Statistics ver.21を用い、分析方法は主要評価項目が反復測定一要因分散分析(r-ANOVA)、多重比較(Tukey HSD)、副次評価項目は単純集計とした。
【結果】合計31例のデータを収集した。男性22人、女性9人。年齢43歳~96歳、担当科は呼吸器内科25例、循環器内科3例、総合内科2例、血液内科1例、呼吸不全の原疾患として感染症15例、間質性肺炎6例、悪性腫瘍4例、心不全2例、その他4例であった。主要評価項目の呼吸困難は軽減し、SpO2・呼吸数は改善したが、心拍数のみ装着30分後に改善しなかった。(図表1)副次評価項目としての睡眠、経口摂取、会話については翌日改善傾向がみられた。ネーザルハイフローに関連した有害事象としては口渇が15例と約半数に認められた。ネーザルハイフロー装着後の呼吸困難の軽減が乏しかった症例(NRSの改善が3以下)の臨床的背景を検討したところ13人の有熱者を認め、その内12人は心拍数の改善は認めなかった。
【考察】ネーザルハイフローの装着により呼吸困難は軽減、SpO2呼吸数は改善した。睡眠、経口摂取、会話も改善しておりQOLの向上につながっていることがわかった。しかし、呼吸困難の軽減が乏しい症例が存在し、有熱者に多かった。呼吸困難は患者の主観によって決定するものであり、発熱などの様々な因子に影響されると思われる。呼吸不全患者の症状緩和を図るには、酸素化や呼吸数だけではなく主観的指標である呼吸困難を評価する必要があると考える。
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