第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

チーム医療

[O12] 一般演題12

[O12-09] 救命救急センターにおける摂食機能療法への取り組み

○増田 和美1、笠井 有希1 (1. 広島市立広島市民病院救命救急センター)

キーワード:摂食機能療法、摂食機能障害、救命救急センター

【目的】クリティカルケアを行う救命救急センターでは、患者の生命維持を目標に全身管理が行われる。同時に感染管理、廃用症候群予防の観点から早期の栄養管理が重要である。脳卒中治療ガイドラインでは脳卒中患者の約70%が摂食機能障害を有しており、早期に摂食機能療法を開始することは、誤嚥性肺炎の予防やADL向上に役立つとされている。A病院救命救急センターでは年間約280名の脳卒中患者を受け入れている。そのうち摂食機能療法が算定されている患者数は年間約40名、延べ算定件数は約200件と、脳卒中患者数に比べて算定件数が少ない。このことから、必要な患者に摂食機能療法が十分に行われていなのではないかと考えた。そこで現状を調査し必要な摂食機能療法への取り組みを行い、その有効性を明らかにする。【方法】期間は2019年4月から2020年3月とした。救命救急センター看護師(45名)を対象に質問紙を用いて摂食機能療法の意識調査を実施した。取り組みとして①スタッフを対象とした摂食機能療法の研修会の開催、②救命救急センターの摂食嚥下支援チーム6名が中心になり対象患者の抽出、③摂食機能療法開始時に必要な訓練実施計画書の作成、看護計画立案、摂食機能療法実施テンプレート入力などの個別指導を行う。その後、再度意識調査を実施する。【倫理的配慮】質問紙調査は無記名とし、質問紙の提出をもって研究参加の同意とした。得られた情報は個人が特定されないようにデータ化、分析を行った。またA病院倫理審査委員会の承認を得た。【結果】取り組み後、摂食機能療法の対象患者がわかるスタッフは75%から85%へ、摂食機能療法の算定基準を知っているスタッフは41%から59%へ、実施計画書作成など必要な事が分かるスタッフは68%から95%へ増加した。摂食機能療法算定患者数は59名、延べ算定件数は346件に増加した。【考察】研修会を開催することにより、知識の確認ができ、摂食機能療法に対する動機づけが出来た。また摂食嚥下支援チームが対象患者を抽出したことで、摂食機能療法が必要な患者に早期から開始され、継続が出来た。スタッフに個別指導を行うことは、個々の実践能力や理解度に応じた内容であり,訓練開始時に必要なことの理解につながった。しかし取り組み後も算定開始基準を知っているスタッフが59%にとどまっていることは、摂食機能療法の経験が浅く、開始判断に迷ったことが考えられる。今回の取り組みは摂食機能療法の増加につながった。しかし、実際の訓練の内容や質についての検証は出来ておらず今後の課題である。摂食機能療法の知識を広め、実技指導等によるスキルの向上、既存のフローチャートの活用など継続した取り組みが必要である。急性期医療においても機能障害の評価、安全な経口摂取の開始、食事内容の検討、能力向上へ向けた訓練指導など発症早期からの介入は重要である。