[O15-03] 病棟入院患者急変時における看護師の臨床推論 ~スクリプト理論を用いた認知プロセスの仮説モデル構築~
キーワード:臨床推論、患者急変、スクリプト理論
【はじめに】近年、臨床推論というキーワードが看護師の世界で注目されている。臨床推論とは、患者情報を収集および分析し、情報の重要性を評価し、代替行動を比較検討するために、形式的および非形式的な思考方略を使用する複雑な認知プロセスと定義される。看護師が臨床推論を活用できる代表的な場面に、入院患者の急変対応があるが、患者急変というペースの速い複雑な臨床状況で問題解決するために、看護師がどのような認知プロセスを使用するかを特定する研究は行われていない。
そこで、病棟入院患者急変時における看護師の臨床推論の実態を明らかにするために、場面想定法と質問紙調査法を用いた観察的研究を計画した。今回は、この観察研究に必要な臨床推論の概念構造として、患者急変時の看護師の認知プロセスについて仮説モデルを構築した。
【目的】病棟入院患者急変時の看護師の認知プロセスについて仮説モデルを構築する。
【方法】①臨床推論の理論的な概念枠組みとして認知心理学におけるスクリプト理論を用いた。②このスクリプトモデルを、問題解決における一般的認知プロセスと患者急変時の基本的なアセスメントフローチャートに組み込んだ。
【倫理的配慮】本モデル作成は、A大学倫理審査委員会の承認を得た観察研究の一連のものとして実施した。
【結果】スクリプト理論に基づいた患者急変時における看護師の認知プロセスの仮説モデルは、〈第一印象〉〈初期予測〉〈情報収集〉〈仮説形成〉〈仮説検証〉〈意思決定〉の6つの側面で構成した(図)。
〈第一印象〉患者の部屋を訪れ、実際に患者と遭遇した看護師は、数秒で患者の最初の視覚的情報を収集する。
〈初期予測〉患者が急変していると認識することで、「患者急変スクリプト」を活性化させ、緊急コールや救命処置の必要性、緊急度や初期対応など、急変に関するさまざまな行動を予測する。
〈情報収集〉実際に患者に接触し、問診やバイタルサイン測定、身体診察などから患者の自覚症状や生理学的状態、他覚的所見を得る。
〈仮説形成〉得られた情報は、それらの特徴を結び付ける関係についての知識を含む、単数から複数の「疾患スクリプト」を活性化させ、疾患における仮説を形成する。
〈仮説検証〉この仮説について直感的あるいは分析的または両方の推論方略を用いて、追加情報を収集しながらスクリプトを強めたり弱めたり消去したりする。情報収集と仮説(再)形成、検証はスクリプトが適合するまでループする場合がある。
〈意思決定〉いずれの推論の場合も、疾患スクリプトが適合した場合に、初期対応という行動に出る。
【考察】以上の認知プロセスは、状況の複雑さや問題の不確実性に加えて、個人のケア基準や価値観などが影響していると仮定した。この仮説モデルから《急変患者の第一印象から初期予測する認知プロセス》《患者の情報収集から仮説形成に至る認知プロセス》《追加情報から仮説検証を行う認知プロセス》の3つの場面で看護師の臨床推論を測定することができると考える。
【結論】病棟入院患者急変時における看護師の臨床推論の実態を明らかにするために、スクリプト理論を基盤とした6つの認知プロセスを仮説モデル化した。この仮説モデルに基づいて場面想定法を用いた患者急変シナリオ動画を作成し、それを対象者が視聴し、そのアセスメントや対応について質問紙調査法を用いた観察的研究を行う予定である。
そこで、病棟入院患者急変時における看護師の臨床推論の実態を明らかにするために、場面想定法と質問紙調査法を用いた観察的研究を計画した。今回は、この観察研究に必要な臨床推論の概念構造として、患者急変時の看護師の認知プロセスについて仮説モデルを構築した。
【目的】病棟入院患者急変時の看護師の認知プロセスについて仮説モデルを構築する。
【方法】①臨床推論の理論的な概念枠組みとして認知心理学におけるスクリプト理論を用いた。②このスクリプトモデルを、問題解決における一般的認知プロセスと患者急変時の基本的なアセスメントフローチャートに組み込んだ。
【倫理的配慮】本モデル作成は、A大学倫理審査委員会の承認を得た観察研究の一連のものとして実施した。
【結果】スクリプト理論に基づいた患者急変時における看護師の認知プロセスの仮説モデルは、〈第一印象〉〈初期予測〉〈情報収集〉〈仮説形成〉〈仮説検証〉〈意思決定〉の6つの側面で構成した(図)。
〈第一印象〉患者の部屋を訪れ、実際に患者と遭遇した看護師は、数秒で患者の最初の視覚的情報を収集する。
〈初期予測〉患者が急変していると認識することで、「患者急変スクリプト」を活性化させ、緊急コールや救命処置の必要性、緊急度や初期対応など、急変に関するさまざまな行動を予測する。
〈情報収集〉実際に患者に接触し、問診やバイタルサイン測定、身体診察などから患者の自覚症状や生理学的状態、他覚的所見を得る。
〈仮説形成〉得られた情報は、それらの特徴を結び付ける関係についての知識を含む、単数から複数の「疾患スクリプト」を活性化させ、疾患における仮説を形成する。
〈仮説検証〉この仮説について直感的あるいは分析的または両方の推論方略を用いて、追加情報を収集しながらスクリプトを強めたり弱めたり消去したりする。情報収集と仮説(再)形成、検証はスクリプトが適合するまでループする場合がある。
〈意思決定〉いずれの推論の場合も、疾患スクリプトが適合した場合に、初期対応という行動に出る。
【考察】以上の認知プロセスは、状況の複雑さや問題の不確実性に加えて、個人のケア基準や価値観などが影響していると仮定した。この仮説モデルから《急変患者の第一印象から初期予測する認知プロセス》《患者の情報収集から仮説形成に至る認知プロセス》《追加情報から仮説検証を行う認知プロセス》の3つの場面で看護師の臨床推論を測定することができると考える。
【結論】病棟入院患者急変時における看護師の臨床推論の実態を明らかにするために、スクリプト理論を基盤とした6つの認知プロセスを仮説モデル化した。この仮説モデルに基づいて場面想定法を用いた患者急変シナリオ動画を作成し、それを対象者が視聴し、そのアセスメントや対応について質問紙調査法を用いた観察的研究を行う予定である。