第22回日本救急看護学会学術集会

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[O15] 一般演題15

[O15-04] 救急看護師のワーク・モチベーションと良いストレスの関係

○田根 綾香1、高橋 望1 (1. 島根県立中央病院)

キーワード:救急看護師、ワーク・モチベーション、良いストレス

【目的】看護師は他の職業に比べてストレスが高く、中でも重症患者の多い救急部門の病棟看護師(以下、救急看護師)は最もストレスが高いとされる。救急のストレスフルな環境下でも仕事に対して意欲をもって働く看護師のモチベーションには、成功体験や承認などの良いストレスが関係しているのではないかと考え、救急看護師のワーク・モチベーションと良いストレスとの関連を明らかにすることとした。

【方法】A病院の救急看護師71名を対象に無記名自記式質問紙を用い、基本属性(救急経験年数など)、ワーク・モチベーション、良いストレスを調査した。ワーク・モチベーションは、西村らが開発した『看護師のワーク・モチベーション測定尺度』12項目4件法を、良いストレスは独自に作成した8項目7件法を使用した。基本属性等は記述統計を行った。『ワーク・モチベーション』は「関心がある」「とても関心がある」を、『良いストレス』は「しばしば感じる」「常に感じる」を1点として集計した。『ワーク・モチベーション』が10点以上を高ワーク・モチベーション該当者とし分析した。該当者に対する単変量解析において二値変数はFisherの直接確率法、連続変数はWilcoxonの順位和検定を用いた。さらに基本属性および『良いストレス』に関する多変量解析はロジスティック解析を、関連する因子の抽出にはステップワイズ法を用いp<0.05を有意とした。統計解析はStata15、SPSS Ver.21を利用した。

【倫理的配慮】本研究は、A病院臨床研究・治験審査委員会の承認を得て実施した(中臨R19-016)。

【結果】アンケートは61名(回答率85.9%)から回答があり、有効回答61名(有効回答率100%)だった。看護師経験年数の中央値[四分位範囲]は10[5, 14]年、救急経験年数の中央値[四分位範囲]は4[2, 7]年だった。高ワーク・モチベーション該当者は20名(32.8%)で、該当者と非該当者の2集団について分析した結果、看護師経験年数、救急経験年数に差はなかったが、『良いストレス』の③信頼関係が築けたと感じた時(p=0.009)、④チームワークの良さが発揮された時(p=0.012)、⑤良い評価が得られた時(p=0.001)、⑦達成感を感じた時(p=0.003)、⑧学習意欲が湧いた時(p=0.000)で、有意差がみられた。該当者と良いストレスとの関係の分析では、⑤良い評価が得られた時,オッズ比6.4(95%信頼区間:1.2-34.4)、⑧学習意欲が湧いた時,オッズ比5.1(95%信頼区間:1.4-19.1)が有意だった。

【考察】救急看護師のワーク・モチベーションは、良い評価が得られることや学習意欲が湧くことに関連があった。救急部門配属後は、早く一人前になろうと知識や技術の習得に努めるが、そのような時に良い評価が得られると、さらに良い看護を提供しようと学習意欲が湧き、成長に繋がる。また、周囲から認められると後輩から頼られる存在にもなり、自分の成長を感じられることが意欲を持って働く原動力になっていると考えた。
救急部門は患者の重症度が高く、緊張感を常に感じるストレスフルな環境であるからこそ、互いの成長を承認し合う環境が必要である。ワーク・モチベーション非該当者の割合が全体の7割近くを占めていたことから、救急のストレスフルな環境下でモチベーションを維持することは難しいといえる。そのため、成果を意識的に言語化して伝えるなど、互いの成長を認め合い、チームワークを発揮し、補完し合える関係作りに取り組むことが求められる。