[O2-04] ドクターカー看護師の惨事ストレスの現状と対策の検討
Keywords:惨事ストレス、ドクターカー、病院前救護、プレホスピタル
<目的>
ドクターカー運用開始2年半の当院ドクターカーに乗車する看護師(以後ドクターカー看護師)が直面した衝撃的体験や惨事ストレスの現状を明らかにし、今後のストレスマネジメントを検討する。
<方法>
対象:2017年5月の運行開始から2019年12月までに半年以上ドクターカー乗車経験のある22人
期間:2019年12月1日から12月31日
プレホスピタルを行っている医療機関を対象に行った心的外傷ストレスに関する増野らの質問紙表を用い、部署内の回収ボックスへの提出を依頼した。
<結果>
精神的に衝撃を受ける事案があったと答えた者は22名中9名(40.9%)、心的外傷性ストレス症状を測定する出来事インパクト尺度IES-RによるPTSDハイリスク者は1人(4.5%)だった。ドクターカー看護師の活動前の心理状態としては「状況が自分の能力を超えているかもしれない」(77.3%)「患者の状態がわからない」(63.6%)「どんな現場か気になる」(54.5%)などの不安を抱え、活動中は「焦り」(40.9%)「動揺」(31.8%)を感じていたが、一方で「使命感」(40.9%)を感じて業務にあたっていた。また、ドクターカーについて「身体的に負担である」(50%)「精神的に負担である」(54.5%)という思いを持ちつつも「出動にやりがいがある」(45.6%)と感じていた。活動後の行動として「共に出動した人と活動内容を共有した」(86.4%)「同僚に活動内容を話す」(81.8%)が多かった。必要なシステムや教育体制として「体系だった事前教育」(72.7%)や「初期治療に関する知識」(86.3%)が多く、「出動によるメンタル面への影響」(31.8%)や「活動後の高リスク者へのフォローアップ」(22.7%)「活動後の高リスク者のリスクスクリーニング」(31.8%)は3割程度にとどまった。
<考察>
ドクターカー看護師は活動前に現場の状況や自分の能力に対する不安を抱き、活動中は「焦り」「動揺」を感じているが、同時に「使命感」や「出動はやりがいがある」という思いを抱えていた。先行研究においても「病院前救急診療活動に従事する看護師は様々な不安を抱えつつも使命感を持って職務にあたっており、働きがいや高いモチベーションをもっている」とあり、当院の看護師においても相反する複雑な思いを抱えつつも、やりがいや使命感に支えられ活動を行っていることがわかった。
活動後は共に出動した人や同僚に活動内容を話すことによって自ら情動的コーピングをとっていた。「惨事ストレス症状が寛解した消防隊員がとった対処行動の60%は同じ職場の人への相談である」という報告もあり、当院の看護師も出動で被ったストレスを人に話すことで発散しようとする行動がとれていた。必要なケアシステム・支援では、教育や業務に関する内容のものが多くメンタルフォローへの需要は低い。その理由として、惨事ストレスへの認知が低く、自身の感情をストレスととらえていないことが考えられる。惨事ストレスの知識や対処法・セルフケアについての学習や、出動前・中・後の感情のストレスチェックリストを作成し、自身のストレス状況をモニターできる制度の確立が必要である。そしてお互いが惨事ストレスを知ったうえで、意図的に敬意やねぎらい、労りの言葉をかけられるような環境作りが求められる。
<倫理的配慮>
質問紙は無記名とし、質問紙冒頭に研究参加への理解と同意を得たうえで回答してもらうように記載した。本研究はA病院の倫理委員会の承認を得て実施した。
ドクターカー運用開始2年半の当院ドクターカーに乗車する看護師(以後ドクターカー看護師)が直面した衝撃的体験や惨事ストレスの現状を明らかにし、今後のストレスマネジメントを検討する。
<方法>
対象:2017年5月の運行開始から2019年12月までに半年以上ドクターカー乗車経験のある22人
期間:2019年12月1日から12月31日
プレホスピタルを行っている医療機関を対象に行った心的外傷ストレスに関する増野らの質問紙表を用い、部署内の回収ボックスへの提出を依頼した。
<結果>
精神的に衝撃を受ける事案があったと答えた者は22名中9名(40.9%)、心的外傷性ストレス症状を測定する出来事インパクト尺度IES-RによるPTSDハイリスク者は1人(4.5%)だった。ドクターカー看護師の活動前の心理状態としては「状況が自分の能力を超えているかもしれない」(77.3%)「患者の状態がわからない」(63.6%)「どんな現場か気になる」(54.5%)などの不安を抱え、活動中は「焦り」(40.9%)「動揺」(31.8%)を感じていたが、一方で「使命感」(40.9%)を感じて業務にあたっていた。また、ドクターカーについて「身体的に負担である」(50%)「精神的に負担である」(54.5%)という思いを持ちつつも「出動にやりがいがある」(45.6%)と感じていた。活動後の行動として「共に出動した人と活動内容を共有した」(86.4%)「同僚に活動内容を話す」(81.8%)が多かった。必要なシステムや教育体制として「体系だった事前教育」(72.7%)や「初期治療に関する知識」(86.3%)が多く、「出動によるメンタル面への影響」(31.8%)や「活動後の高リスク者へのフォローアップ」(22.7%)「活動後の高リスク者のリスクスクリーニング」(31.8%)は3割程度にとどまった。
<考察>
ドクターカー看護師は活動前に現場の状況や自分の能力に対する不安を抱き、活動中は「焦り」「動揺」を感じているが、同時に「使命感」や「出動はやりがいがある」という思いを抱えていた。先行研究においても「病院前救急診療活動に従事する看護師は様々な不安を抱えつつも使命感を持って職務にあたっており、働きがいや高いモチベーションをもっている」とあり、当院の看護師においても相反する複雑な思いを抱えつつも、やりがいや使命感に支えられ活動を行っていることがわかった。
活動後は共に出動した人や同僚に活動内容を話すことによって自ら情動的コーピングをとっていた。「惨事ストレス症状が寛解した消防隊員がとった対処行動の60%は同じ職場の人への相談である」という報告もあり、当院の看護師も出動で被ったストレスを人に話すことで発散しようとする行動がとれていた。必要なケアシステム・支援では、教育や業務に関する内容のものが多くメンタルフォローへの需要は低い。その理由として、惨事ストレスへの認知が低く、自身の感情をストレスととらえていないことが考えられる。惨事ストレスの知識や対処法・セルフケアについての学習や、出動前・中・後の感情のストレスチェックリストを作成し、自身のストレス状況をモニターできる制度の確立が必要である。そしてお互いが惨事ストレスを知ったうえで、意図的に敬意やねぎらい、労りの言葉をかけられるような環境作りが求められる。
<倫理的配慮>
質問紙は無記名とし、質問紙冒頭に研究参加への理解と同意を得たうえで回答してもらうように記載した。本研究はA病院の倫理委員会の承認を得て実施した。