[O4-04] 救難訓練に参加した消防学校学生の傷病者体験による気づき
キーワード:救難訓練、消防学生、傷病者体験
【目的】
A空港では,被災現場での初動対応をはじめ,各種緊急活動やその手順を習熟し,航空機火災の防御・人命救助・医療救護等の体制を確立することを目的に,空港機関,警察や消防,医療機関に所属するDMATや救護班などが合同で傷病者の救難救護訓練を実施している。今回,我々は訓練に携わる傷病者役を担う消防学生に着目した。本研究では青年期にある男性消防学生が模擬傷病者を演じたことによる気づきの様相を明らかにすることを目的とする。
【研究方法】
対象:本研究の参加に同意が得られた,A空港航空機事故消火救難訓練に参加した消防学生40名。方法:令和元年9月26日の訓練実施日翌日に,「救難訓練に傷病者役として参加した気づき」をA4用紙1枚に自由に記述してもらい,無記名で任意で提出してもらった。分析方法:提出されたレポートの記述内容を研究者間で精読し,学びや気づきに関する記述を抽出した。次に,抽出したデータを内容の類似性に基づきグループ化し内容分析を行った。客観性の確保には,研究者間で討議を行った後,研究者以外の教員と災害看護に精通した研究者にスーパーバイズを求めた。
【倫理的配慮】
調査対象者がレポートに記述するにあたり,授業や学校行事等の支障がないよう,あらかじめ消防学校責任者と相談し,時間を調整した。調査対象者に本調査の主旨と目的,個人情報の保護および倫理的配慮について説明した。レポートは任意で提出してもらい,提出をもって本研究への同意とみなした。本研究の実施にあたり研究者所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得た(審査番号298)。本研究における利益相反は存在しない。
【結果】
39名の学生からレポートの提出があった。そのうち無記入の1名を除いた38名を分析対象とした。学生の平均年齢は20.64±1.91歳,そのうち救命救急士の資格保有者は9名であった。レポートの文章を意味内容の類似性に基づきグループ化し分類したところ,<連携と情報伝達>,<傷病者集積技術>,<医療者の心構え>,<傷病者対応への不満>,<救護所のありよう>の4つのカテゴリーと16のサブカテゴリーが抽出された。以下,カテゴリーを< >,サブカテゴリーを「 」で示す。
【考察】
今回,訓練に参加した消防学生達は,災害現場での消防やDMATの指揮本部,関係諸機関との密な<連携と情報伝達>の重要性に気づいていた。また,医療者らが「的確なトリアージ」や「迅速な処置」を行っている姿から<傷病者集積技術>とともに,「緊張感の中で冷静さを保つ」といった<医療者の心構え>を学んでいた。また,傷病者が次々と集積所に運ばれ,傷病者でスタックが生じた現状から「救護所スペースの狭さ」や導線の確保などの問題が浮き彫りになるにつれ,<救護所のありよう>に問題意識を感じていた。一方で,傷病者のトリアージカテゴリーによっては,治療や搬送の優先順位が低くなり,対応が後回しにならざるを得ない。そのため,治療待機群に篩い分けられた者は「待たされることによる不安」から,「適切な処置を受けられていない不満」や「対応の遅さ」など,不満感が出現することに気づいた者もいた。災害現場では迅速に救える命を救うことが最優先とされるため,親和的な対応や接遇面がどうしても見過ごされやすい状況となる。今回も訓練の現場であっても怒号が飛び交い,傷病者役の者に対して「無配慮な心ない言葉」が発せられていた現状を体験したことから,傷病者に対する配慮や声がけ,「安心感を与える関わりの必要性」について傷病者役を通した気づきが得られていたことが明らかとなった。
A空港では,被災現場での初動対応をはじめ,各種緊急活動やその手順を習熟し,航空機火災の防御・人命救助・医療救護等の体制を確立することを目的に,空港機関,警察や消防,医療機関に所属するDMATや救護班などが合同で傷病者の救難救護訓練を実施している。今回,我々は訓練に携わる傷病者役を担う消防学生に着目した。本研究では青年期にある男性消防学生が模擬傷病者を演じたことによる気づきの様相を明らかにすることを目的とする。
【研究方法】
対象:本研究の参加に同意が得られた,A空港航空機事故消火救難訓練に参加した消防学生40名。方法:令和元年9月26日の訓練実施日翌日に,「救難訓練に傷病者役として参加した気づき」をA4用紙1枚に自由に記述してもらい,無記名で任意で提出してもらった。分析方法:提出されたレポートの記述内容を研究者間で精読し,学びや気づきに関する記述を抽出した。次に,抽出したデータを内容の類似性に基づきグループ化し内容分析を行った。客観性の確保には,研究者間で討議を行った後,研究者以外の教員と災害看護に精通した研究者にスーパーバイズを求めた。
【倫理的配慮】
調査対象者がレポートに記述するにあたり,授業や学校行事等の支障がないよう,あらかじめ消防学校責任者と相談し,時間を調整した。調査対象者に本調査の主旨と目的,個人情報の保護および倫理的配慮について説明した。レポートは任意で提出してもらい,提出をもって本研究への同意とみなした。本研究の実施にあたり研究者所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得た(審査番号298)。本研究における利益相反は存在しない。
【結果】
39名の学生からレポートの提出があった。そのうち無記入の1名を除いた38名を分析対象とした。学生の平均年齢は20.64±1.91歳,そのうち救命救急士の資格保有者は9名であった。レポートの文章を意味内容の類似性に基づきグループ化し分類したところ,<連携と情報伝達>,<傷病者集積技術>,<医療者の心構え>,<傷病者対応への不満>,<救護所のありよう>の4つのカテゴリーと16のサブカテゴリーが抽出された。以下,カテゴリーを< >,サブカテゴリーを「 」で示す。
【考察】
今回,訓練に参加した消防学生達は,災害現場での消防やDMATの指揮本部,関係諸機関との密な<連携と情報伝達>の重要性に気づいていた。また,医療者らが「的確なトリアージ」や「迅速な処置」を行っている姿から<傷病者集積技術>とともに,「緊張感の中で冷静さを保つ」といった<医療者の心構え>を学んでいた。また,傷病者が次々と集積所に運ばれ,傷病者でスタックが生じた現状から「救護所スペースの狭さ」や導線の確保などの問題が浮き彫りになるにつれ,<救護所のありよう>に問題意識を感じていた。一方で,傷病者のトリアージカテゴリーによっては,治療や搬送の優先順位が低くなり,対応が後回しにならざるを得ない。そのため,治療待機群に篩い分けられた者は「待たされることによる不安」から,「適切な処置を受けられていない不満」や「対応の遅さ」など,不満感が出現することに気づいた者もいた。災害現場では迅速に救える命を救うことが最優先とされるため,親和的な対応や接遇面がどうしても見過ごされやすい状況となる。今回も訓練の現場であっても怒号が飛び交い,傷病者役の者に対して「無配慮な心ない言葉」が発せられていた現状を体験したことから,傷病者に対する配慮や声がけ,「安心感を与える関わりの必要性」について傷病者役を通した気づきが得られていたことが明らかとなった。