第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

重症患者看護

[O5] 一般演題5

[O5-07] 重症患者に対するホットパックを用いた下肢保温による睡眠障害の予防効果

○小泉 由香子1、馬川 未紀1、小泉 満希子1、天谷 愛1 (1. 都立広尾病院救命救急センター)

Keywords:重症患者、睡眠、睡眠障害、体温管理、ホットパック

<目的>就寝前の入浴や足浴は睡眠障害の改善に効果があるとされているが、救命救急センターでは患者の重症度、緊急入院などにより容易に就寝前の足浴を実施できないことが多い。ホットパックによる下肢保温効果を重症患者に対し検討した研究はなく、ICU・救命救急センターにおける睡眠障害の予防に有効であるかは明らかとなっていない。就寝前にホットパックを使用し下肢を保温することで、睡眠障害の予防に効果が得られるか明らかにしたいと考えた。

<方法>1.研究対象者:オープンスペースの大部屋に入院した15歳以上の患者、重症度スコアのAPACHEⅡにて11点以上60点未満の患者、SOAD score S項目1)にて評価でき、JCSⅡ-10以上の患者とした。2.データ収集内容:21時から翌日6時の間、SOAD score S項目を参考に睡眠状況を観察した際のスコア、患者の基本属性、下肢保温日・通常のケアを実施する日の2日間の疼痛の訴えや体位変換の回数など睡眠・覚醒に影響を及ぼす項目、病室の照度・騒音値など環境条件についてデータを収集した。3.介入方法: 1人の対象者に、下肢保温日(以下ホットパック日)と通常のケアを実施する日(以下コントロール日)を設け、ホットパック日とコントロール日を交互に設定した。また、対象者をA群(1日目ホットパック日、2日目コントロール日)、B群(1日目コントロール日、2日目ホットパック日)に無作為に割り付けた。4.介入方法:ホットパック日は20時から30分間、ホットパックを使用し下肢の保温を実施した。また、病棟消灯時には照度を0-1lx以下、騒音値を47dB以下になるよう睡眠環境を整えた。睡眠状況はSOAD score S項目を使用し、21時から翌日6時の間1時間毎に1分間、4段階評価を行った。5.分析方法:SOAD score S項目の平均値を比較した。本研究はA病院の倫理委員会から承認を得た上で実施した。

<結果>対象者20名(男性15名、女性5名)からデータ収集を行った。疾患は、循環器疾患が13名と最も多かった。介入前・中の環境条件は共に「30度以上のベッドアップ」の項目において、ホットパック日にベッドアップが多く実施され有意差が認められた。p値は介入前p=0.01、介入中p=0.04であった。SOAD score S項目の平均値は、ホットパック日、コントロール日で有意差は認められなかった(p=0.11)。(表1)

<考察>今回の検証では、ホットパックの有効性は確認できなかった。その原因として、以下の2点が考えられた。1点目は、ホットパック日の夜間に30度以上のベッドアップを多く実施していたことである。ベッドの背角度は、20度を超えると睡眠に悪影響を及ぼすとされている。30度以上のベッドアップが睡眠の妨げとなり、ホットパックの効果を弱めた可能性が考えられる。2点目は、ホットパックの実施期間が短かったことである。睡眠は末梢の熱放散により、深部体温が低下することで促進される。末梢血管の血流が増加し熱放散が起きれば、ホットパックの使用が1日でも睡眠に対し効果を発揮すると考えたが、期待した効果は得られなかった。先行研究では、足浴は2日目以降に効果が現れるとされており、ホットパックも同様に、2日目以降に効果が発揮されると考えられる。今後の課題として、環境条件を揃え、ホットパックによる下肢保温が連日実施できるように、介入日数を増やしていく必要がある。
1)SOAD score S項目は良く眠っている状態が0、完全に不眠の状態が3であり、平均値が0に近いほど良眠できている状態を表す。
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