[O5-12] Emergency PCI後にICUへ入室した、急性心筋梗塞患者の主訴に関する考察
Keywords:急性心筋梗塞、主訴
【はじめに】Emergency PCI(以下、PCI)後、ICUに入室する急性心筋梗塞患者(以下、AMI患者)の主訴には傾向があると感じた。主訴を調査し検証すると、AMI患者に於ける新たな看護介入や知見を得た。【目的】PCI後にICUへ入室したAMI患者の主訴を調査し検証する。【用語の定義】「主訴」とは、身体的・精神的苦痛を発言する事を意味する。「寒気」とは身体が寒いと感じることを意味する。【倫理的配慮】本研究は倫理委員会の承認を得た。【方法】(1)対象者:救急搬入されPCI後、ICUに入室したAMI患者(2)除外条件:人工呼吸器、非侵襲的陽圧換気、大動脈バルーンパンピング、経皮的心肺補助装置を装着した者(3)期間:2018年4月1日~2019年3月31日(4)場所:A病院ICU(5)調査方法:電子カルテを用いて、後ろ向きに調査した。主訴は意味内容を損なわないように端的に修正した(6)測定項目:主訴、年齢、性別、ICU滞在日数、救急搬入してからICUに入室した時間、救急搬入時体温、ICU入室時体温(7)分析:記述統計法、連続数値はスチューデントt検定、独立数値はχ2乗検定による単変量解析を実施した。有意水準はP<0.05とする。【結果】対象者36名。男23:女13。平均年齢67.2歳(±12.3)。平均ICU滞在日数2.8日/人。主訴として28個を抽出した。出現率20%以上の主訴(出現率)は、腰痛(56%)、Numerical Rating Scale 3点以下の胸痛(47%)、不眠(36%)、吐気(33%)、寒気(31%)、排泄の苦痛(28%)、安静の苦痛(25%)である。AMIの非特異的な主訴である「腰痛」と「寒気」に着目した。腰痛有群と無群に分類して、救急搬入してからICUに入室した時間を比較したが有意差はなかった。「寒気」は主訴の有無に関連なく、救急搬入時体温とICU入室時体温で、後者に有意な体温低下が見られた。【考察】「腰痛」は、本研究で最も頻度が高い主訴となった。要因として、絶対安静の長時間化が主に考えられる。調査施設の場合、救急搬入されAMIを疑った時点から、心筋逸脱酵素が極期を過ぎるまで絶対安静が強いられる。腰痛有無群の比較では救急搬入時間からICU入室時間の有意差はない。よって、ICU入室後から心筋逸脱酵素の極期の時間が関係している可能性が高く、継続調査が必要である。看護としてICU入室後、腰痛に有効な体位変換や鎮痛薬、湿布の対応が必要であると考える。「胸痛」はAMIに代表的な主訴と言える。注目すべきは胸痛の程度であり、NRS3点以下が大半である。入院経過に伴い自然消失していた一方、程度が増した症例もあり、胸痛の変化には注意して観察が必要である。「不眠」「吐気」は、AMIの病態的要素や生体侵襲、造影剤の影響、入院による環境変化など複合的要素が考えられる。よって、短絡的な対処療法は危険であり、総合的な判断と対応が必要である。「寒気」は主訴の有無に関連なく、救急時搬入体温からICU入室時体温が低下していた為、主訴が無い患者も潜在的に寒気を感じていたと推察する。調査施設で使用している造影剤の副作用で、体温低下は0.01%以下の頻度であり、薬剤性とは考えにくい。冷汗の気化や皮膚の露出、外気温が影響している可能性があり、初療室〜カテーテル室〜ICUで一貫した体温管理の見直しが要求される。「排泄の苦痛」「安静の苦痛」は基本的欲求の阻害が要因と考える。入院2日目から増加傾向にあり、説明の反復や制限解除の指標を含めた情報提供を行い、苦痛軽減に努めたい。