第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

重症患者看護

[O5] 一般演題5

[O5-13] ARDS患者への人工呼吸器離脱からADL拡大への援助

○飯村 友貴1、鴻巣 有加1、福井 美和子1 (1. 公益財団法人筑波メディカルセンター病院)

キーワード:腹臥位、ARDS、早期離床

<はじめに>

近年、人工呼吸器管理期間の長期化を防ぎ、できるかぎり早期に人工呼吸器からの離脱をすることが重要視されている。さらに、人工呼吸離脱だけに視点を置くのではなく、安静臥床の弊害を減らし、人工呼吸器装着の段階からリハビリテーションを実施することが、有用であるとされている。今回、重症ARDS患者を担当した。人工呼吸器離脱困難と判断されていたが、理学療法士(以下PT)と協働し、適切なタイミングで早期離床や合併症予防に努めたところ、人工呼吸器離脱し、ADL拡大することができたため報告する。

<倫理的配慮>

本研究にあたって当院の倫理委員会に承諾を得た。

<患者紹介>

患者:A氏、60歳代男性、ADL自立、多飲歴あり

現病歴:発熱、食欲低下、歩行困難が出現しレジオネラ肺炎と診断され入院。同日、呼吸状態が悪化し、NIV、NHFC実施も改善認めないため、挿管人工呼吸器管理となり、ICUへ転棟となった。

<実施と経過>

病日2日、P/F比64と呼吸状態悪化し、挿管人工呼吸管理となり、循環動態も不安定なため、体位制限を行っていた。病日4日、循環動態安定。左肺野透過性低下に対して体位ドレナージを開始。右90度側臥位、左30度側臥位で管理した。病日5日、P/F194、循環動態安定しカテコールアミン中止した。肺胞換気の促進と人工呼吸器早期離脱を目的に、医師、PTと話し合い、約18時間腹臥位を実施した。実施するにあたり、スタッフに対し、栄養投与、皮膚障害予防、鎮痛鎮静評価など統一したケアができるよう情報共有を行った。病日6~7日、胃残増加を認めたため、6時間の短時間腹臥位で管理。病日9~10日、意識レベルが改善し腹臥位への拒否が見られ継続は困難となった。胸部X-Pでは、左上葉の透過性低下が残存していたため、A氏に、リハビリテーションの必要性の説明と理解を求め、顔拭きや口腔ケアなどのセルフケア動作や端座位を看護計画に取り入れ、治療的体位管理が安楽に行えるようにPTと共に調整した。また、挿管に伴う疼痛や、口渇の訴えが多く聞かれたことや、多飲歴があることからせん妄のリスクが高いと考え、疼痛コントロールを行い、氷水での口腔ケアを行った。環境調整として、ベッドから窓が見えるようにし、昼夜のリズムをつけたところ、ICDSCはICU退出時まで3点で経過し、抑制せずに経過できた。病日11日に人工呼吸器を離脱し、自力で端坐位を取れるようになった。病日12日にICU退出。ICU退出時MRC44/60点、車椅子への離床は両下肢の筋力低下ありふらつきが著明であった。

<考察>

A氏は、入院時、人工呼吸器離脱は困難と判断されていたが、肺炎への治療を開始後、循環動態も安定しはじめ、呼吸管理について主治医に相談し、PTと共にケア介入を決定した。特に、重症ARDS患者への長時間腹臥位管理が有益であることが示されており、管理については、患者の状態に合わせて実現可能性を考えて行えたことが、人工呼吸器離脱への一因であったと考える。また、苦痛やせん妄発症は、人工呼吸器離脱を遅延する可能性があるため、ADLへの支援として、環境調整やセルフケアへの介入を行ったことも、人工呼吸離脱が成功した要因と考える。

 課題として、今回、ICUで管理された重症患者に生じる全身的な筋力低下(以下、ICU-AW)を予防する必要があったが、A氏のICU退出時のMRCは44点であった。ICU-AWは、リスクファクターの予防が重要である。PTの筋力評価を参考に、情報共有しながら、患者状態に合わせた具体的なリハビリテーションプログラムを検討していきたい。