第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

終末期医療

[O6] 一般演題6

[O6-08] 海外のクリティカルケア領域における終末期ケアの質評価ー患者・家族に視点に着目した文献検討ー

○加藤 茜1,2、田中 雄太2、宮下 光令2 (1. 信州大学医学部保健学科、2. 東北大学大学院医学系研究科)

キーワード:終末期ケア、質評価、患者、家族

【背景】海外では医療の質を評価するうえで、入院期間や医療費などの客観的な数値だけでなく、患者や家族などの当事者の主観的な側面も含む包括的な評価を行っていくことを推奨している。実際に海外のクリティカルケア領域では、終末期ケアの質評価尺度としてQuality of Dying and Death(QODD)が開発され、複数の国において信頼性及び妥当性が検証されている。一方で、本邦では患者や家族などの当事者が終末期ケアの質評価を行う尺度は存在しない。今後本邦においても当事者による終末期ケアの質評価尺度を作成していくことは有用であると考えられるが、そのためにもまずは、現在海外ではどのように当事者による終末期ケアの質評価がなされているのかを整理する必要がある。

【目的】海外の文献をもとに、クリティカルケア領域における終末期ケアの質に対する患者・家族の視点を記述すること

【方法】オンラインデータベースを用いた文献レビュー
■データベース:PubMed、Web of Science、Science Direct
■検索式:((Critical Care) OR (ICU) OR (Intensive Care Unit) OR (ER) OR (Emergency Department)) AND ((Dying and Death) OR (End of Life)) AND (Quality)
■検索範囲:検索の第一段階として、検索範囲は「タイトル・アブストラクト・キーワード・本文」とする。抽出された論文本数が100本以上となった場合は、「本文」、「キーワード」、「アブストラクト」の順に検索範囲から除外していく。
■検索期間:2015年~2019年の5年間
■選択基準:原著論文・オープンアクセス
■除外基準:以下の6つの基準に一つでも該当した場合は除外した。
①患者および家族の視点が含まれていない
②クリティカルケア領域以外が対象となっている
③終末期に関する報告ではない
④小児・未成年を対象としている
⑤会議録などの論文以外の著作物
⑥英語で記述されていないもの

【倫理的配慮】本研究はヒトを対象としておらず、倫理審査の適応外である。しかしながら、研究倫理に則り、著作権等の研究者が有する権利に十分配慮し、文献整理を行った。

【結果】上記の検索式および検索範囲により、PubMed 19本、Web of Science 8本、Science Direct 24本の合計51本が抽出された。抽出された著作すべてを選択基準および除外基準に照らし合わせ、重複する文献を除外したところ、基準を満たすものは5本であった。5本の文献概要を【表1】に示す。

【考察】患者および家族の終末期ケアに対する視点と医療者が捉える終末期ケアには差異があるだけでなく、患者および家族の人種や地域によっても終末期ケアは異なる様相となる。独特な文化的基盤を有する本邦においても終末期ケアの様相は、諸外国と一律に論ずることは困難である。本邦におけるクリティカルケア領域の患者および家族が捉える終末期ケアの現状を明らかにするためには、早急に終末期ケアの評価尺度の作成がなされ、全国規模での調査が行われる必要がある。
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