第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-04] 緊急入院した高齢者の家族に対する退院支援
~家族の心理的変化に合わせた退院支援計画書の開示~

○吉村 朋枝1、松井 里幸1、髙橋 朱里1、棚橋 智都江1 (1. 千葉医療センター)

Keywords:退院支援、退院支援計画書、家族

【目的】
緊急入院した患者の家族が入院時から退院するまでにどのような思いの変化が起きるのか分析し、効果的な退院支援計画書の開示時期と看護師の役割を明らかにする。
【研究方法】
1.研究対象:平成30年12月から令和元年2月までに緊急入院し、回復の兆しがみられ退院支援が必要な65歳以上の患者の家族10名及びA病棟に勤務する看護師24名。
2.研究方法・分析方法
1)患者家族には、半構成的面接法を用いて、『入院期』『回復期』『退院期』の思いについて、インタビューを行った。逐語録の内容をコード化、カテゴリー化した。コード化、カテゴリー化にあたっては、研究者間で合意が得られるまで検討を重ねた。カテゴリーを【】で示す。
2)看護師には、介入前の退院支援計画書を開示する際の家族の反応を調査した。
倫理的配慮:対象者に研究の趣旨・研究以外でデータを使用しないこと、研究参加の辞退はいつでも可能であること等を説明し、同意を得た。調査施設の倫理審査委員会の承認を得て行った。
【結果】
患者家族の背景は、女性8名、男性2名。患者との関係は、配偶者2名、子8名。インタビューで「退院支援計画書についての記憶がある」と述べた家族が10名中9名であった。
13のカテゴリーが導きだされ、『入院期』は【入院と言われた喜びと安心】【自由がない介護から解放されて助かった】【お任せしたい】【入院経験があるから不安はない】【知識がなくて病気に気付けなかった】【経験のないことに対する驚き】【重症な患者への不安と覚悟】【病状の受け入れによる悲しみと回復への期待】、『回復期』には【医師から退院出来ると言われた時期が早い】『退院期』では【視覚的情報で患者の回復を感じた】【医師のICで退院を意識した】【病棟看護師が退院支援をしてくれて安心した】【退院支援に専門職が介入してくれて助かった】が抽出された。
次に、看護師の結果から、研究前の計画書開示の際に「具体的な質問が出ない」「支援内容まで目を向けずに、入院中にサインをしなければならない書類と認識していそう」等の家族の反応をとらえていた。
【考察】
入院期の家族は入院したことへの安心や、想定外の病状を知った時の不安や驚きが入り混じる様々な思いを抱いていた。医師から、患者が回復傾向で、退院可能な状態に近づいていることを説明された段階で退院を意識し始めていた。家族は、患者の回復を視覚的にとらえた上で、医師から退院を見据えた病状説明を受けることで、患者の回復を実感し、不安や驚きの感情を抱いていた入院期から徐々に退院に向けて思いが変化していったと考えられる。視覚的情報を重要視している家族にとって、病棟看護師が入院生活の様子を具体的に伝えることは、家族の思いが退院へ前向きに変化していく大きな要因になると考える。また、リハビリテーション部門や、地域連携部門等で専門職が介入することが効果的であることがわかった。
看護師は、患者の病状に合わせ医師からの病状説明の時期を調整したり、疾患や患者の状況に合わせ専門職の介入を調整したりすることで、退院後の生活に抱いていた不安を軽減させることにつながると考える。
【結論】
1.緊急入院した患者の家族は、回復期に医療者から患者の情報提供を行うことで退院に対する思いの変化が起こり、さらに退院期には前向きに変化する。
2.看護師の退院支援に関する役割として、患者家族に回復している視覚的変化を情報提供、患者の回復期に医師からの病状説明の調整、適切な専門職が介入できるように調整することである。