第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-08] 三次救命センターの初療搬入時における家族の心理と対応の現状
~家族へのインタビューを通して~

○竹原 亜美1、冨岡 小百合1 (1. 大阪府立中河内救命救急センター)

キーワード:家族の心理、三次救命センター

Ⅰ.目的
 救命センターに搬送される重症患者は、突然の急性疾患の発症や慢性疾患の増悪、偶発的な事故や災害などによって生命の危機的状態に陥っている。そのような状況にある患者の家族は予期せぬ急激な出来事により大きな衝撃を受け、精神的な危機状態に陥りやすい。当センターに初療搬入された患者の家族が実際に感じた心情を調査し、その実態を明らかにすることで、家族のニードと当センターの初療搬入時に求められる家族介入について考察することを目的とした。

Ⅱ.方法
 当センターに搬送され入院している患者の家族を対象とし、無作為に本研究への調査協力を家族へ依頼し、年齢、性別、生活背景などにおいてのバラエティを考慮した上で、研究者が本研究の趣旨を説明し同意が得られた家族に対し調査した。半構造化インタビューをもとに、①待機時間②待機中の心情(どのような気持ちで待機されていたか)③待機中に医療者からどのような対応を受けることができたか④待機中にどのような対応があると良いと思われるかを聴取し、得られたデータはKJ法を用いて分析した。

Ⅲ.倫理的配慮
 本研究は当センター師長会の審査・承認を得て実施した。研究協力は自由意思であり、断っても不利益にはならないこと、またインタビューの途中でも中断が可能であること、これらを記載した用紙をもとに口頭にて説明し同意の署名を頂きインタビュー形式での調査を行った。得られたデータの管理、および個人情報の保護を厳重に行った。

Ⅳ.結果
 インタビューは10名の家族に行った。対象者の性別や年齢、患者の受傷機転や重症度などにより解答に大きな偏りを生じることはなく、最終表札は【突然の出来事によるさまざまな心配感情の表出】【長く感じる待機時間】【医療者からの介入が無い事で起こる不安の助長】【搬入後に得られた安心感と希望】の4つのカテゴリーに分けることができた。  
 44枚のラベルのうち、最もラベル数が多かった最終表札は【突然の出来事によるさまざまな心配感情の表出】であり26枚のラベルには≪今、何がどうなっているのか一言教えてもらえたらよかったのに≫≪一言あればそれだけで安心できたと思う≫≪途中経過でも状況を教えて欲しかった≫≪待ち時間がとても長く感じました≫などの発言が聞かれた。このことから家族が救急搬送という突発的な状況に陥った初期には「情報のニード」と「保証のニード」が高いことが理解できた。また、≪混乱して、感情が抑えきれず泣いてしまいました≫≪頭が真っ白で、状況を思い出せない≫≪急なことで状況を飲み込めませんでした≫≪焦っていたのか、漢字を間違えました≫というように、情緒的混乱により客観的な情報処理能力にも問題を生じていることがわかった。一方では2枚のラベルに留まった少数意見であったが≪先生が説明しに来てくれたので安心できました≫と搬入後に担当医師が家族のものへ病状説明に足を運んでいることにより得られた心情も語られていた。

Ⅴ.考察
 早期の情報提供が「安心」を与えるということが本研究によって明らかになった。
限られた時間内で家族の心理的特徴を理解した介入は家族と医療者との信頼関係の構築に繋がる。
 当センターは緊急的な治療を最優先としつつも、医師のみを主導とするのではなく看護師が自ら家族の元へ行き可能な範囲で情報を提供できるよう、スタッフ個々が家族対応の方法を学び、早期から家族介入を行うことができるよう整備していくことが必要である。