第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-10] 救急外来における患者家族が初療待機中に抱く心情の検討

○江原 寛士1、山崎 友香子1、戸部 理絵2 (1. 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター、2. 信州大学医学部附属病院 看護部)

キーワード:救急外来、初療、心情

<目的>
 救急外来に搬送される患者の家族は、初療待機中に精神的な危機的状況に陥りやすい。精神的な危機的状況を回避するためには、患者家族が訴えるニードだけでなく、表出されにくい潜在的な心情にも着目する必要がある。しかしながら、患者家族の初療待機中における潜在的な心情に焦点をあてた研究は少ない。そのため、本研究では、初療待機中における患者家族の具体的な心情を明らかにすることを目的とし、患者家族の精神的な危機的状況を回避するための介入の一助となることを期待して行う。

<方法>
デザイン:半構造的面接による質的記述的研究
研究期間:2019年7月から2020年2月 対象:研究期間内に当施設に搬送された患者家族
分析方法:半構造的面接から得られた口頭データからコードを抽出し、サブカテゴリー、カテゴリー化した。分析はアドバイザー、スーパーバイザーの助言を得て信頼性と妥当性を検討した。

<倫理的配慮>
A病院医学部医倫理委員会の承認を得て実施した。対象の患者家族には研究の趣旨を文書と口頭にて説明し、研究参加の同意を得た。

<結果>
 同意が得られた家族は4例。患者との関係は妻2名(40代、70代)、母親1名(30代)、嫁1名(60代)であった。逐語禄から142のコード、51のサブカテゴリー、10のカテゴリーが抽出された。
 抽出されたカテゴリーは、患者の状態がわからず【患者の情報を知りたいという欲求】と、医療機関への搬送により【医療者への信頼と生命の保証を確信することによる安心】を感じる一方で、多忙そうな医療者の姿や不確実で少ない情報の説明により【医療者の言動による不安や緊迫感の増強】が示された。患者家族は、患者の生命を助けるための治療を優先してほしいという気持ちから【治療優先による面会や説明に対する遠慮】があり、身近な家族との繋がりから【支えとなる家族との繋がりによる安心感の獲得と不安の軽減】を得ることが出来ていた。また、【結びつきのある家族への配慮】を行い、【患者の状態及び自身の状況と現状把握の困難さによる恐怖心と不安感の増大】、【今後の生活環境の変化や行動について思案】、【置かれた状況における役割認識と使命感】、【コーピング行動を伴う患者生存への願い】の思いに至っていた。

<考察>
 初療待機中の患者家族は、救急・重症患者家族のニードに関する先行研究と同様に「情報」と「保証」に関連するニードが挙げられ、これらは初療待機中から持っているニードであることが分かった。一方で、患者の不安定な状態を目の当たりにしている状況から、患者の生命を助けるための治療を優先してほしいとの考えから面会への遠慮があり、初療待機中の心情として特徴的であると考えられる。また多忙な医療者の姿を見せたり、不確実で少ない情報を伝えたりすることにより、患者家族の不安を増強させることが示された。患者家族は情報を望むが、伝える内容やその際の医療者の態度が危機を回避するために重要な要素であると示唆された。
 待機する患者家族は、置かれた状況や患者に対する不安から現状把握の困難さを感じているが、支えとなる家族との繋がりにより安心感を得ていた。同時に自身の役割を認識し、今後の生活環境の変化に対して多様な不安を持つことも示された。不安軽減のため、待機する患者家族を支える存在の招致や連絡を促し、待機する家族の役割に応じた介入の必要性が示唆された。
 患者家族は様々な心情の中で待機をしているが、実際の現場ではこれらの心情を積極的に表出することは少ないと実感している。初療に関わる看護師が、これらの心情や役割を踏まえて介入することが大切である。