第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-12] HCU入室患者家族の経時的ニードの実態調査

○小清水 彩1 (1. 荒尾市民病院南B1病棟)

Keywords:CNS-FACEⅡ

Ⅰ.はじめに
 A病院のクリティカルケアに携わる看護師は家族の思いに応えられているのか不安を抱えており、家族看護の重要性は認識しているが治療や処置、ケアなどを優先せざるを得ない現状にあった。A病院救急外来における重症・救急患者家族アセスメントのためのニードとコーピングスケール(CNS-FACE)を用いた先行研究では、救急外来からHCUに緊急入院となった患者家族は情報、接近、保証のニードが高い事が分かった。しかし追跡調査はできておらず、HCU入室患者家族のニードを明らかにするため、改訂版CNS-FACEを用いて本研究に取り組んだ。

Ⅱ.目的
 CNS-FACEⅡを用いてHCU入室患者家族の経時的ニードの変化を明らかにする

Ⅲ.方法
 1.研究デザイン:実態調査研究
 2.研究期間:平成31年4月1日~令和2年3月31日
 3.研究対象:HCU入室患者家族61名
 4. データ収集方法
  1)入院時は救急外来看護師や入院を担当したHCU看護師がCNS-FACEⅡ行動評定チェック用紙31項目を4段階で評定
  2) CNS-FACEⅡ測定概念を利用したデータ収集
  3)3つのカテゴリーで分類・分析
   (1)診療ガイドライン別の病態による分類
    蘇生後、外傷、循環器、呼吸器、神経系、その他
   (2)患者の年齢による分類
    中年期(40~64歳)、老年期(65歳以上)
   (3)家族の続柄による分類
    配偶者、子、その他

Ⅳ.倫理的配慮
 本研究はA病院の倫理委員会の承認を得て実施した。また電子カルテから得た情報は個人が特定できないよう配慮し、記録した用紙類は研究目的以外では使用せず、研究終了後は速やかにシュレッダーにかけて廃棄処分する。

Ⅴ.結果
 全対象者では、1~14日目まで常に情報、接近、保証が他に比べて高かった。8日目に社会的サポート、情緒的サポート、接近、保証が上昇し、9日目に情報、11日目に接近と保証が最大となった。
 病態別では、特異的な結果が出た神経系を報告する。神経系では、8日目に社会的サポート、情緒的サポート、保証が、11日目に情報、接近が最大となった。その一例を報告する。
 A氏は80代女性、脳梗塞でHCUに入院し在室日数は8日間。A氏家族は、全対象者平均に比べて全てのニードが高かった。1~2日目に情緒的サポートが最も高く、3日目からは情報、接近、保証が高かった。8日目に社会サポートが上昇した。

Ⅴ.考察
 先行文献同様、情報・接近・保証のニードが高い結果となった。重症患者家族は突然の出来事に驚き、家族を失うかもしれない恐怖や、今後起こりうる事態に想像ができず、危機的状況に陥る、そのため情報のニードが高い。私たち看護師は患者の現状や治療について細かく家族に伝え、情報のニードを満たす事が重要だと考える。
 A氏家族については、受け持ち看護師として、感情を表出できるような雰囲気作りや言葉かけを行った事で「早く病院に連れていけばよかった」という情緒的サポートのニードを早期に引き出す事ができ、3日目に情緒的サポートが下降に転じ、ニードの充足に繋がったと考える。さらに他人には言いにくい医療費について尋ねられ社会的サポートのニードを引き出す事が出来たのも、8日目までの受け持ち看護師の関わりによってよりよい関係性が構築できていたからだと考える。
 本研究に取り組む際、私たちは家族のニードを把握できる事で家族対応が標準化できるのではないかと考えていた。しかし患者家族のニードは様々な要因で変化し、個別性が高い事がわかった。患者が中心となりがちだが、限られた時間の中で少しでも家族が安心できるよう、看護師は意図的に関わり、ニードを充足させる事が重要である。
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