第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

精神的ケア

[O8] 一般演題8

[O8-01] 三次救急医療に従事する看護師の精神健康度が共感性に与える影響

○瓜﨑 貴雄1 (1. 大阪医科大学看護学部看護学科)

キーワード:精神健康度、共感性、三次救急

【目的】研究目的は、三次救急医療に従事する看護師の精神健康度が共感性に与える影響を明らかにすることである。
【方法】1.対象者:本邦の救命救急センター全289施設のうち、協力の受諾を得た73施設の看護師2,122名を対象とした。2.調査方法:郵送法にて無記名自記式質問紙調査を2018年11月~2019年3月に実施した。3.調査内容:質問紙は、(1)看護師の個人特性(2)自殺未遂患者をケアすることへの不安(3)看護師の自殺未遂患者に対する態度尺度(瓜﨑,2017)(4)一般健康調査票12項目版(GHQ12項目版)(中川,大坊,2013)(5)多次元共感性測定尺度(MES:Multidimensional Empathy Scale)(鈴木他,2008)(6)看護実践環境(緒方他,2010)(7)自由記述から構成した。GHQ12項目版は1因子12項目からなり、信頼性と妥当性が確認されている。回答形式は4件法であり、採点にはGHQ法を用いた。得点範囲は0~12点であり、得点が高いほど精神健康度が不良であることを表す。MESは、他者の感情や意見に影響されやすい傾向を表す【被影響性】(5項目)、他者に焦点づけられた情緒反応を示す【他者指向的反応】(5項目)、自己を架空の人物に投影させる認知傾向を表す【想像性】(5項目)、相手の立場からその他者を理解しようとする認知傾向を表す【視点取得】(5項目)、他者の心理状態について自己に焦点づけられた情緒反応を示す【自己指向的反応】(4項目)といった5因子24項目からなり、信頼性と妥当性が確認されている。回答形式は5件法である。本研究では、逆転項目の処理をした後、下位尺度毎に平均得点を算出した。得点範囲は1~5点であり、得点が高いほど各特性が強いことを表す。本研究では、GHQ12項目版とMESについて分析を行った。4.分析方法:GHQ12項目版は区分(臨界)点に従って3点以下を良好群、4点以上を不良群に分類し、MESの各下位尺度の得点を比較するために対応のないt検定を行った。有意水準は5%とし、分析には統計解析ソフト(IBM SPSS Statistics 26)を用いた。5.倫理的配慮:A大学研究倫理委員会の承認を得た。GHQ12項目版は配布数分を代理店から購入し、MESは開発者に使用の許可を得た。なお、本研究では、質問紙の回収をもって、研究参加の承諾が得られたと判断した。
【結果】質問紙は829名から回収し(回収率39.1%)、419名の有効回答を得た。精神健康良好群は225名(53.7%)、精神健康不良群は194名(46.3%)であった。対応のないt検定の結果を表1に示した。【被影響性】は精神健康不良群が精神健康良好群に比べて有意に得点が高かった(t=3.79417,p<0.001)。【自己指向的反応】は、精神健康不良群が精神健康良好群に比べて有意に得点が高かった(t=3.16417,p=0.002)。
【考察】本研究の結果は、精神健康が不良である看護師は、患者の言動や感情に影響されやすい傾向、患者の心理状態を自己に焦点づける傾向が強いということを示している。このような状態にある看護師は、自他の区別がつきにくいために、患者との間に適切な心理的距離をとることができず、患者を共感的に理解することが困難になると考えられる。さらに、このような状態が続けば、看護師が疲弊し、精神状態がますます悪化するといった悪循環に陥ることも懸念される。
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