第22回日本救急看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD2] パネルディスカッション2

『限界集落の健康問題と救急医療』

座長 三橋 睦子(久留米大学 医学部看護学科 教授・学科長)
   寺師 榮(東洋医療専門学校 救急救命士学科 顧問)

[PD2-02] へき地における地域医療の現状について

○岡 裕也1、横田 修一2、菅波 祐太2、西脇 健太郎3 (1. 公益社団法人 地域医療振興協会 揖斐川町春日診療所、2. 同 揖斐川町久瀬診療所、3. 同 揖斐川町谷汲中央診療所)

Keywords:へき地医療、地域医療、限界集落、高齢化、過疎化、地域医療振興協会

地域医療振興協会(JADECOM)は、へき地を中心とした地域保健医療の確保と質の向上を目指して1986年に設立された公益社団法人である。医師約1200名を含む職員数は約9300名で、全国に80ヶ所余りの病院・診療所・保健施設を運営しており、揖斐川町春日診療所もその一つである。岐阜県の西端にある揖斐川町は人口21000人余りの小さな町であるが、その中でも山間部にある春日地区(旧春日村)の人口は2019年現在883人である。10年前は人口1300人高齢化率46%であったが、現在は高齢化率が57%で75歳以上の後期高齢者が37%を占め急速に高齢化や過疎化が進んでいる地域である。昔は村内に4校あった小学校は1校となり、5年前に中学校は廃校となった。限界集落は日本でも増加の一途であるが、今回はそのような地域での医療現場の実際を紹介したいと思う。当診療所は週休2日で、毎日の午前中と週1日夕方に外来診療を行い、週1回午後には更に山奥の出張診療所での出張診療を行っている。午後は主に訪問診療を行っており、その合間を縫って往診、地域ケア会議、学校検診、住民講話、などを行っている。年間の延患者数は、外来5000-6000人、訪問診療は400-500人、休日夜間等の時間外緊急往診は30-40人、在宅での看取りは5-10人程度である。離島などと異なり後方支援病院には比較的恵まれており車で20分程の町中には280床程度の揖斐厚生病院があり、更に車で50分程の大垣市内には三次救急にも対応可能な900床程度の大垣市民病院がある。後方支援病院への紹介患者は年間140-180人程度で、そのうち循環器疾患や外傷等での救急搬送は年間30-40人程度である。同じ揖斐川町内の他の山間部にあるJADECOMの久瀬診療所と谷汲中央診療所と共に緩やかなグループ診療を行いながら、機能強化型在宅支援診療所として訪問患者さんを中心に原則24時間365日体制であり夜間休日は各診療所の4名の医師が当番制で診療を行っている。患者さんの多くは70-80歳代であり、高齢者の独居や二人暮らしが増え子供たちが住む町中へ出ていく人も多い。しかし住み慣れた家でいつまでも暮らしたい、最期まで家で過ごしたいと思っている人も多い。へき地ではそういう人が安心して暮らしていける医療を提供するのも大切な役割であろう。これからも地方では高齢化や人口減少は進んでいき、国内では様々な医療問題が起こってくると思われる。しかし、これからは患者さんを一人一人の人間としてまるごと診ながら、家族に寄り添い、地域とともに歩む医療が必要な時代となるであろう。