第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD2] パネルディスカッション2

『限界集落の健康問題と救急医療』

座長 三橋 睦子(久留米大学 医学部看護学科 教授・学科長)
   寺師 榮(東洋医療専門学校 救急救命士学科 顧問)

[PD2-04] 限界集落の暮らしと高齢者の終末ケアの支援

○中村 陽子1 (1. 龍谷大学 文学部 実践真宗学研究科 教授)

キーワード:限界集落、高齢者、終末ケア

限界集落における高齢者の終末ケアの現状と支援、そしてその課題にについて考えたい。
 限界集落が抱える暮らしづらさとしては地理的な不利、社会資源の不足、人口の減少と急速な高齢化に加え、高齢者の単身世帯や高齢者のみの世帯の急増等があげられる。  
 しかし一方で豊かな自然環境や相互扶助の伝統、受け継がれてきた生活・看取りの文化は限界集落の強みとして、暮らしの中に残されてきた。
 調査から限界集落における終末期の現状は在宅死よりも病院での死亡が多かったが、後期高齢者になると自宅か病院死(施設死)が多かった。厳しい生活条件の下での暮らしの中、人々は地域に深い愛情を持ち、家で終末期を迎えることを希望しながらも現実は無理であるとの思いが強かった。高齢化と過疎化、相互扶助の文化が薄れてきており、看取りの文化の継承が困難である現状も明らかになった。
 「終末期ケア」には「その人の人生の最期をどういう形で締めくくりたいのか」という人生のテーマが問われる。そうした思いに耳を傾け可能にしていく支援が大切である。
 高齢者が最期まで住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう医療・介護・福祉の連携による一体的な支援の提供ができる地域包括ケアシステムの構築が各地域の特性に合わせて推進されている。
 しかし、医療・介護資源の少ない限界集落の現状においては、地域にある資源の有効活用、専門職が担えない役割の代替えが重要となる。その為には私たち看護師が消滅の危機を迎える限界集落での暮らしに思いをはせ、医療のみではなく終末期を可能にするために必要な人・物等多くの資源と協働していける発想と実践力が問われる。