第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY4] シンポジウム4

『救急領域におけるタスクシフト・タスクシェアを考える』

座長 芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター 看護管理室 看護副部長)
   清村 紀子(大分大学大学院 教授)

[SY4-02] 救急初療における救急看護師の新たな役割

○増山 純二1 (1. 学校法人巨樹の会 大学設置準備室 )

キーワード:特定行為研修、救急初療、救急看護実践

A病院は513床を有し2020年2月より救命救急センターが開設された。筆者(以下、特定行為研修修了看護師)はA病院に2015年4月から2020年3月まで勤務し、今回、その5年間のA病院における特定行為研修修了看護師の役割について述べていく。

A病院の救命救急センター開設前の救急医療体制は、脳神経疾患、循環器疾患については24時間体制で患者の受け入れを行い、4日に1回の救急輪番体制をとっていた。2015年から2017年までは救急医が1-2名体制、2018年から2019年、救急科の常勤医師はおらず、1〜2名/日(8:30-22:00)の非常勤医師を中心にした体制であり、非常勤医師が不在する時間は各科医師、もしくは外科主任診療部長(救急部長兼任)が代行する体制であった。2019年度の実績は、ヘリ搬送56名、救急車4,130名、walk in4,402名の総患者数8,588名である。

 A病院の特定行為研修修了看護師は、2016年3月に公益社団法人日本看護協会、特定行為研修を修了し、特定行為区分は「呼吸器(気道確保に係るもの)関連」「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」「栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連」「創部ドレーン管理関連」「動脈血液ガス分析関連」「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」である。

A病院の特定行為研修修了看護師の活動場所は救急初療であり、役割は早期に患者へアプローチし、プライマリーケアを遂行し、問診、身体所見から緊急度の判断、緊急検査など、医師の診断計画の一助として実施し、患者の重症化の予防を図るとしている。具体的に4つの役割を担っている。1つ目は、患者来院時(救急車、walk in)の診察(予診)である。これは、救急医の不在時や輪番日で患者が多い場合は、医師が診察する前に予診を行い、必要時には検査を実施し、医師へ引き継ぐ役割である。2つ目は、医師と協働した緊急検査の実施である。動脈血採血、超音波検査の実施や血液検査、CT検査、MRI検査の指示を出している。3つ目は、トリアージ後の診察待ち時間を利用したレントゲン検査、感染症検査の指示である。4つ目は、初療室の調整を行なっている。これは、救急医や当直医師と相談しながら、看護師のリーダーと協働し、診察する研修医の決定、各科のコンサルトの調整、救急初療のベッドコントロールの役割を担っている。

このように、救急医の一部の役割を委譲した形で、特定行為研修修了看護師の役割として実践している。その結果、患者へ早期に介入することができ、効率よく診療につなげることができ、患者の苦痛への緩和、重症度の予防を図ることができると考える。しかしながら、このような救急看護師としての新たな役割が、救急看護実践の一つとして位置付けて良いものか皆様と議論したい。