第22回日本救急看護学会学術集会

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ワークショップ

[WS2] ワークショップ2

「我が国の救急電話相談トリアージの現状と課題」

救急電話相談トリアージ委員会

[WS5-01] 我が国の救急電話相談トリアージの現状と課題

○赤尾 いづみ1、○船木 淳1、○伊藤 雪絵1、○平柳 和奈1、○印東 真奈美1 (1. 救急電話相談トリアージ 委員会)

Keywords:救急電話相談トリアージ

2019年中の救急自動車による救急出動件数は、約664万件(速報値)と過去最多となり、救急需要の増加への対応や救急業務の質の向上が求められている。高齢化の進展に伴い、65歳以上の高齢者の救急搬送に占める割合が今後も増えていくことは必然的であり、また救急搬送の約5割が軽症者であることから、病院前救急や病院における救急医療の適時利用を推進する必要性がある。
 救急電話相談に関する取組みとして、増加する救急需要への対策と住民の不安解消を目的に、#7119(救急安心センター事業)や♯8000(こども医療電話相談事業)などの行政主体の事業、また、生命保険商品の付加サービスとして、救急受診に関する相談窓口と救急受診に関する助言などを行う受診相談事業が展開されている。医療機関においても患者等からの電話を受けて受診の必要性や緊急性を助言する対応を独自に実施している。このように、救急電話相談によるトリアージは院内外問わず様々な現場で実践されており、対応する看護師の役割も大きいといえる。
 救急電話相談によるトリアージでは、相談者からの電話を受けて緊急度を判断し、受診や応急処置に関するアドバイス、医療機関案内などを実施する。これは、相談者の不安軽減だけでなく、不必要な時間外受診の抑制や救急車の適時利用に繋がるなど、救急医療の質向上に効果が期待される。しかし、救急電話相談によるトリアージに携わる看護師に関する教育体制は、各施設や地域間で異なっており、看護師の経験則で緊急度の判断が行われていることに加え、対面による情報収集ができない「電話相談」という特性上、オーバートリアージを容認している状況がある。また、電話相談者の個人特定ができないこと、経過や転帰に関する情報を得られない場合が多いことなどから、事後検証の困難性がある。更に、救急電話相談によるトリアージの概念や、各施設における実践など明らかではない。
 以上のことから、本学会では、2020年より行政等で実施されている救急電話相談事業なども含めて、救急電話相談に関する全国の現状、救急電話相談に従事する看護師の教育やコンピテンシーの明確化、トリアージの質の検証等に関して調査、検討することを目的に、「救急電話相談トリアージ委員会」を設置した。本委員会では、今後、「救急電話相談トリアージ」に関する現状把握と課題抽出を目的とした全国的な実態調査を実施していく予定である。調査結果から各施設における機能や地域性を活かした上で、「救急電話相談トリアージ」の質向上に向けた取組みの提案ならびに相談者が機を逃さずに安全な医療機関へのアクセスを支援できるような体制作りを推進していく。
参考:https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/200513_kyuuki_03.pdf