第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 12.チーム医療

[OD1001] 10.チーム医療.看護管理

[OD1001-04] 看護部に所属する院内救命士の実践内容

田口 諒1、○関 隆裕1 (1. 海老名総合病院救命救急センター)

Keywords:院内救命士、救急外来、看護部所属

[はじめに]
 わが国では1991年に救急救命士法が制定されて以来、救急救命士は年々増加傾向にある。2020年度は64954人の救急救命士が登録されている。救急救命士の主な就職先は消防機関であるが近年では医療機関で従事する者も少なくない。A病院は救急救命士(以下救命士)が看護部所属として2004年度から救急外来で従事している。厚生労働省は2020年度の救急救命士法の改正で現状認められている33項目の救急救命処置を院内の重症度傷病者に対して行う方針で協議されている。現状、病院に所属する救命士が行う業務内容は病院によって大きく異なる。院内で活躍する救命士による文献では現場での現状と課題として救命士の有用性を明らかにしているものもあるが院内救命士に着目した文献は少ない。
そこでA病院で働く看護部に所属する院内救命士が救急搬送患者に行う実践内容をあきらかにすることは、救急救命士の行う業務の実態を明らかにすることだけでなく、看護師と救命士の個性の違いを知り、救急医療の中で専門性に応じたより安全で確実な医療提供に繋がるのではないかと考えた。
[目的]
A病院で働く院内救命士の実践内容をあきらかにする
[研究方法]
質的記述的研究。
本研究では対象を4名選定し、半構造的面接によるインタビューを行った。対象はA病院で働く救急救命士であり、消防署での救命士経験はなく、院内救命士としての社会人経験のみの者とした。
インタビューの内容を逐語録におこし、コード化、カテゴリ化し分析を行った。分析時には質的研究の経験者にスーパーバイズを受けた。
[倫理的配慮]
A病院の倫理委員会の承諾を得て行った。[受付番号261]
[結果] A病院で従事する救命士4名に半構造的面接を行った4名の経験年数はそれぞれ1年目1名、2年目1名、4年目1名、20年目1名であった。面接を行った時間はそれぞれ60分程度でありトータル243分であった。分析の結果11のサブカテゴリと以下の5つのカテゴリが抽出された。1搬送業務への意識では、〈患者を安全に指定された場へ運ぶ〉〈患者の変化に注意する〉などのサブカテゴリで構成された。2危機的状況にある家族への配慮では〈第一声で患者・家族の不安を探る〉〈家族の置かれている状況に近づく〉などのサブカテゴリで構成された。3状況に応じた他者尊重では〈理解しやすい言葉かけや方法を実施する〉〈社会人としてのマナーを意識する〉などのサブカテゴリで構成された。4院内の他職種との連携では〈院内職種の立場を理解する〉〈役割や考え方の違いにとまどう〉というサブカテゴリで構成された。5外傷疾患に対する専門的スキルでは〈学校で学んだ知識を発揮する〉で構成された。
[考察]
 A病院看護部所属の救命士は救命士独自の業務として搬送が重大な役割と認識しており、常日頃から院内のみならず、院外への患者搬送に対し業務を遂行している事が今回明らかとなった。また、看護師が院内での教育に携わる機会が多い為、家族や患者の背景にも着目し患者・家族対応への意識が意図せず根付いていることが考えられる。救命士教育の中では、プレホスピタルでのCPA患者や外傷患者に対する教育に力を注いでいる。しかし、院内規定の中で自身等が学んできた知識や技術を活かしきれていないと予測されたが、外傷患者対応やCPA患者の蘇生対応で、固定法や質の高いCPRといった知識や技術を発揮していた。今後、救命士法の改正に伴い、院内役割の幅が広がる可能性が高い。救急外来に従事する看護師と救命士は互いに得意分野を尊重し、医療チームとして患者の最善を担保する姿勢が必要となる時が目の前にきているのだろう。